[職場闘争]第11回団交報告 part 2 〜労使対等原則に反する就業規則を糺す〜

2020年10月1日の職員会議「事務局調整会議」で協会から就業規則等作成・変更(案)が職員に提示され、これ等について何か意見があるならば、10月21日(水)までに同意・不同意含め書面で提出せよとのことだったので、当該は10月後半は暫く有給休暇を取り、私用で滅茶苦茶忙しかったが、当該及び組合名で同日に「就業規則等作成・変更に対する要求並びに意見書」と「不同意通知書」を提出。それ等について11月4日(水)の職員会議「事務局調整会議」で労働者代表選出が行われた。その際、当該等が提出した意見書及び不同意通知書について協会側の回答を記した文書が配布され、古屋総務課長から口頭でも説明があった。

これまでの団体交渉で我が組合が指摘した休日労働に関する規定が整備されたことやどういう意見が出されたのか文書で周知してくれたのは、これまでにない丁寧な対応で、前進であり評価できる。が、どうやら、意見書と不同意通知書を提出したのは当該だけの様で、その他職員はからは無かった様だ。意見書等を出した手前、已む無く労働者代表に立候補したが、選出方法は従来通りで、当該から言わせてもらえば“酷いもの”だったとは言え、従来の就業規則等と新たな作成・変更箇所の一部にNoと言った者 vs 全てにYesと言った者の対決となり、当該の惨敗であった。

労働者代表選出の結果は受け入れるとしても、意見書について正しく理解されていない点や事実上無回答の箇所もあり、これは協会と改めて協議する必要があるので、本団交ではそれ等の議論を中心に行った。
かなり細かい箇所の確認と要求になったので、以下、主要な部分をいくつか拾い上げて報告したい。

就業規則 第3条第2項について

協会の就業規則の第3条第2項には(規則の遵守)として、

「職員は、本会の公共的使命を理解するともに、この規則を守り上司命令に忠実従って事務局の秩序を維持し相互協力に協力してその職責を遂行するよう務めなければならない。」

とあり、当該及び我が組合は、

「職員は、本会の公共的使命を理解し、この規則を遵守しなければならない。」

に改めることを要求した。
協会からの回答は「ご要望として承ります」だけだったので、どういう意味かと尋ねたところ、今のところ変える気はない、とのことだった。
この条項は従前からのものであり、当該は前々から「なんだかなぁ…」と思っていた箇所であり、機会があれば変更してほしい・変更すべきだと思っていたところであった。

この条項は大体どこの職場・事業場の就業規則にも総則として記されているが、そもそも、就業規則総体の目的や適用範囲等に関する規定であって、労働基準法第2条に基づくものである。労基法2条は、労使対等に労働条件を決定し、労働者及び使用者は、就業規則等を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならないと規定されている。

ところが、協会の就業規則の第3条の第1項には「本会は、この規則に定める労働条件により、職員に就業させる義務を負う。」と使用者側の義務はさらっと書かれているが(これが普通)、第2項には「…公共的使命を理解するともに、この規則を守り上司命令に忠実従って事務局の秩序を維持し相互協力に協力してその職責を遂行する…」と労働者側の義務については、奇妙な文言が付け加えられている。
就業規則は使用者側の裁量で決定されるので、絶対必要記載事項(労基法89条)さえ、整えられていれば、違法なものは当然無効だが、何を記載しても構わない。しかし、ごちゃごちゃと意味不明で曖昧な文言を加えたり、就業規則の在り方を歪めるような条項はいかがなものか。

協会の就業規則の第3条の第2項にある「本会の公共的使命を理解」は、協会は公益法人であることから、まぁ、これは協会のオリジナリティとして認めてもいいが、「上司の命令に忠実に従って…」は頂けない。そもそも「上司」って誰よ?
これを協会に問い質したところ、O常任理事は「それはその人の上の人間、管理職、中間管理職であったり、ということでしょう」とのことだったが、つまり、その「上司」とは雇用された労働者も含むのであって、換言すれば、「労働者は労働者の命令に忠実に従う」という、まぁ何というか、自己言及のパラドックス、トートロジーみたいなものではないか? それに、職員は就業規則に従うのか、「上司の命令に忠実に従う」のか、どっちに従えばいいんだ?

これには他の組合員からも、「属人的な部分に比重が置かれる様な規定はおかしいでしょう」「酷い職場になると“俺が就業規則だ”と言い出す、とんでもない“上司”が居たりするんですよ」との発言もあった。
事実、協会の事務局長の末吉や事業課課長代理の水内は、事務局長は偉いんだぞ!*だの、規則にない自分の好悪感情や価値観を課員に押し付けて、業務命令だ!と言って憚らない輩である**。これでは労使対等な労働条件やルールも有名無実化する。

* その偉い“事務局長様”は都合が悪くなると団交からも都労委審問の証言からも逃げるというのはどういうことよ? 情けなくないか?

** こちらの過去記事を参照のこと。
[職場闘争]組合加入から公然化・団交要求までの道程 part 1
[職場闘争]第1回団交報告 part 3 〜「魚は頭から腐る」ということ〜
[閑話休題]“上司は偉い”のドグマ〜『さぽーと』2019年2月号・3月号セミナー「福祉職場におけるノーレイティング設計」から〜

協会顧問弁護士は「上司の指揮管理下にあるのは当然なのだから、あってもいいんじゃないでしょうか…」という様なことも言っていたが、それは協会の就業規則の服務規定にあることでもあるし、ここは労基法2条に基づいた大原則を謳い、基本的で一般的な、フツーの規定にする様に再度要求し、検討するとの回答を得た。

微妙くもO常任理事は、本規定は協会の根幹を成す等と変更に難色を示していたが、こんな非常識で珍妙な条項に、労働者の人格権を無視した協会のハラスメント体質が如実に表れていると言えよう。

就業規則 第6条第2項について

これは今回の就業規則変更で新設された条項で、(試用期間)に関するものである。これまではあっさりとした規定であったが、今回はある意味具体的な条項を入れ込んだものになっている…が、使用者側の主観的判断でどうにでも解釈できる条項も含まれており問題があることを意見書で指摘した。

以下が該当条項である。

前項の試用期間中又は試用期間満了の際、下記内容に該当し、本会が職員として不適当と認めた者は本採用しない 。
(1) 挨拶ができない、身だしなみが悪いなど、本会の注意にもかかわらず、基本的マナーが改善されない場合
(2) 職員の能力・性格等が本会の業務内容に適さないと判断された場合
(3) 重要な経歴を偽り学歴・職業等、又は面接等で申し述べた事項が事実と著しく異なる場合
(4) 有資格者、経験者としての必要とされる能力に足りず、改善の見込みも薄い場合
(5) 勤務態度が悪い場合(指示に従わない ・ 協調性の欠如・ 勤務意欲の欠如等)
(6) 健康状態が悪く業務に耐えられない場合
(7) 必要書類を提出しない場合
(8) その他、職員としてふさわしくないと認められる場合

協会の回答では、主観的判断は行わないし、現職の職員には適用しないとあったが、「挨拶できない」だの「身だしなみ」だの「基本的マナー」だの協会幹部・管理職の好悪感情でどうにでも判断できるもので、かつて、東京都労働委員会の第3回審問で、当該組合員は髭を生やしており、会員の前には出せないという、とんでもない人権侵害発言を協会は平気で話していて、労働委員会委員からも呆れられた経緯があった***ことを思うと、そら恐ろしいものを感じた。協会幹部・管理職の人権感覚の欠如を鑑みるに、こんな馬鹿げた条項などとても受け入れられるものではない。
また、労働法に詳しい弁護士に見せたところ、「この言葉遣い…何とかならないのかなぁ、それにこんな文言を普通、就業規則に入れますかねぇ…」と苦笑していた。

*** こちらの過去記事を参照のこと。
[職場闘争]不当労働行為救済申立・日本知的障害者福祉協会事件 第3回調査報告
[職場闘争]髭を生やすかどうかは個人の自由!〜大阪市同様の日本知的障害者福祉協会事務局のお寒い人権感覚〜

経歴詐称や能力不足、勤労意欲の欠如、健康状態が悪い(勤務に際して健康や障害への合理的な配慮が必要であるかどうかの確認は重要だが)は許容するとしても、問題なのは「(2) 職員の能力・性格等が本会の業務内容に適さないと判断された場合」だ。特に性格が業務に適さないとはどういうことか?
これは他の組合員からも、「業務に適さない能力・性格って何ですか? 具体的に答えられますか?」との質問には協会は答えられなかった。いくらでも恣意的に判断される恐れがあり、「あなたは協会の職員として性格が適さないからクビ」なんてことになった場合、解雇争議・訴訟は必至である****
O常任理事は「協会業務は企画立案など配属された課によって多様な能力が求められる」等と答えていたが、そんな能力はどこの企業だって社員に求められることでしょうよ。団交や労働委員会の審問(証人尋問)で平気で嘘をついたりするO常任理事の方が余程問題があるだろうに(常任理事は職員ではないが、必要とされる能力は職員以上に多くのものが求められるんだけどね…建前上は)。
一応、この件も再度の検討ということになった。

**** この事例は、part 2【番外編】で。

これは意見書や団交では言わなかったが、社会福祉実践団体の職員として求められる職員像にはもっと大事なものがあるのではないだろうか?
社会福祉に関する基本的理解や障害者に対する権利擁護の意識であったり、人権感覚や社会福祉に関わる者としての倫理や価値がそうだ。そういうことに何も触れていないのは、ある特定の技能を持った専門職として採用される場合があるにしても、社会福祉実践団体としてどうなのかと思わざるを得ない。
これでは協会がソーシャルワーク云々と語っていても、協会事務局の実態との乖離に多くの会員は驚き、失望することだろう。今回はそこまでのレヴェルの話ではなく、マイナスから就業規則の原点に立ち返らせることが目的なので、これは次回以降の課題だ。

それにしても、協会は労使対等の原則や近代的人権思想を理解していないのがよく解った(知性や教養の問題だよね…「上司」の。だとしてもこんな規定つくるか?)。


長くなったので今回はここまで。
次回は、蛇足ではあるが、本記事にある協会との議論から見えてきたことを、他の事例や違った視点から“辛辣に”part 2【番外編】として書こうと思う。本論とは少しずれるので興味無い方は飛ばして、後にUPするpart 3をご覧頂きたい。

To be continued…

 

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