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[閑話休題]ドナルド・トランプは障害者をどう見ていたのか?〜『さぽーと』2020年11月号「今月号に寄せて」“差別は恥ずかしい”から〜

『さぽーと』2020年11月号

月刊誌『さぽーと』2020年11月号は本来であれば、全国知的障害福祉関係職員研究大会(京都大会)の特集号であったが、京都大会がCOVID-19の感染拡大で次年度に延期になってしまった為、急遽、特集を差し替え、特集「座談会 知的障害のある方の尊厳を守る─日本知的障害者福祉協会としての取り組み─」になった。

特集に関連して、毎号、協会の理事が「今月号に寄せて」(旧「巻頭言」)というコーナーで協会役員の立場として発言している。11月号は協会理事で弁護士の川島志保氏(嘗て『AIGO』『さぽーと』誌の編集委員も務められた)に、特集テーマに合わせて、「差別は恥ずかしい」と題して寄稿頂いた。
川島氏の論考では、Donald Trump米大統領(以下、本人について言及する際は単にトランプと略)の持つ差別感情を、白人警察官によるアフリカ系アメリカ人への暴行・殺害に端を発した“Black Lives Matter”運動等との関連から敷衍して、人の心に潜む差別意識について論じている。昨今、差別が公然と口にされているという指摘は肯首できるし、差別に対して無自覚・無関心なトランプがアメリカの大統領となってしまった現実に、この様な社会現象・社会病理の一端が現れていると私も思う。
そこで、本ブログ記事では、トランプが障害のある人をどういう目で見ていたのかを、“僭越ながら”少々補足してみたい。 続きを読む

[日々雑感]国及び地方公共団体の障害者雇用率「水増し」問題を許してはならない!〜知的障害者の雇用義務化を巡る経過と共に〜

今から20年くらい前、日本知的障害者福祉協会の事務局が東京都港区西新橋にあった頃、私は通勤に営団地下鉄丸ノ内線利用し、霞ケ関駅で降りて、事務所まで14~5分の道程を歩いて通っていた。
朝の丸ノ内線の車内では当時の厚生省児童家庭局障害福祉課のW専門官とよく一緒の車両になった。W専門官は『AIGO』(現・『さぽーと』)誌の編集会議にもたまに出席してくださっていたし、厚生省への原稿依頼の際、電話でお話をしていたが、私は、当時は(今も)“ペイペイ”(自虐的に使っているのではなく、かつて面と向かって言われた→詳細はこちらを)だったので、私が「愛護協会」の事務局員だとは気付いてはいなかったようだった。

そして、いつも乗っている車両には、肢装具を身に着け、杖を突いている身体に障害のある女性も乗っていた。丸ノ内線は主要ターミナル駅に停まる為、通勤ラッシュが凄まじく、その女性はさぞ大変だったろうと思う。実際、発車停車でよろけて倒れ、気付いた他の乗客らがシートに座らせたり、私も体を支えてあげた事があった。彼女は私と同じく霞ケ関駅で降りていたようだったが、何処に行くのだろう?何処に勤めているのかな?と気になっていた。
そんなある日、用事があって(当時は…ここ数年来“仕事では”厚労省の合同庁舎に入館したことがない、事情は本ブログの他の記事からご察しください)厚生省の入る中央合同庁舎5号館の高層階行きエレベータに乗ったら、彼女が行き先階ボタンのパネルの前にある丸椅子に座り、乗客の行き先階ボタンを押す係をしていたのだった。彼女は厚生省(?)のエレベーターガールだったのか!と謎が解けたと同時に、中央省庁もこのように障害のある人を雇用しているんだなと思ったものだった。

さて、本題に移る。 続きを読む

[閑話休題]『さぽーと』2018年5月号 今月の切り抜き「優生手術の被害者の救済を」から考える〜協会と優生学・優生思想・パターナリズム〜【後編】

敗戦後、戦前戦中の「産めよ、殖やせよ」人口政策への批判と一転して戦後の人口抑制政策、そして、女性の権利として、日本社会党の衆議院議員の加藤シズエ(女性解放運動家)・福田昌子(女性医師)・太田典礼(男性医師)らが不妊・中絶・避妊の自由を求めて法案を提出し、1948年に「優生保護法」が成立した。
優生保護法が果たして本当に女性のReproductive Health and Rights(生殖の健康と権利)を護る法律だったのかについても批判があるが、国民優生法に代わり誕生した優生保護法は戦前の旧法以上に障害者差別を助長し、彼らの生殖の権利を侵すものであった。

 優生保護法 第1条 この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。
第2条 この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもつて定めるものをいう。

第4条 医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹つていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、前条の同意を得なくとも、都道府県優生保護委員会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。 続きを読む

[閑話休題]『さぽーと』2018年5月号 今月の切り抜き「優生手術の被害者の救済を」から考える〜協会と優生学・優生思想・パターナリズム〜【前編】

戦後の1948年に成立した「優生保護法」によって、強制不妊手術を受けた宮城県の知的障害のある女性が国を相手取り1,100万円の損害賠償請求の訴訟を起こし、2018年3月28日に第1回口頭弁論が仙台地裁で行われた。国は請求棄却を求めているが、優生保護法(障害者団体他の運動により1996年に「母体保護法」に改正)による優生手術の違法性を問う初めての訴訟であった。そして、その後、5月17日には優生保護法による不妊手術により優生手術を受けた北海道・宮城県・東京都の被害者が一斉に提訴した。旧優生保護法を巡る国賠訴訟の第2弾である。
わかっているだけで、優生手術の実施件数は、本人の同意によるものが8,516件、優生保護審査会の審査によるものが16,475件だ。「本人の同意」とは言うものの、知的障害・精神障害のある人が、果たして、その手術の意味を本当に理解し、同意していたかは大いに疑問であるし、その他の障害であっても、何のための手術か本人に知らされないまま不妊手術が行われた事例もあるという。このような優生思想に基づく障害者差別・人権侵害を放置した国の不作為は糾弾されて然るべきあり、今後、この動きは全国に広がっていくのは当然のことであろう。

『さぽーと』2018年5月号の今月の切り抜き「優生手術の被害者の救済を」では、旧優生保護法による強制不妊手術を取り上げているので、それに纏わる話題を幾つか記してみたい。
知的障害者福祉の歴史において、優生学・優生思想やパターナリズムとの関係を問うことは避けて通れない道である。そして、日本知的障害者福祉協会(日本精神薄弱児愛護協会)の歴史においても然りである。その当時に対する評価は読者にお任せするとして、当該の知る限り、戦前・戦後の論調を紹介してみたいと思う。 続きを読む

[集会報告]12・23障害者労働組合・学習会 〜「最低賃金の減額の特例」は障害者差別ではないですか?〜

2017年12月23日(土)、今日はTwitterでfollowしていて、どんな活動、どんな取り組みをしているのか知りたかった障害者労働組合の学習会 “「最低賃金の減額の特例」は障害者差別ではないですか?”に参加した(会場は東京都障害者福祉会館)。参加者は自分を含めて10名+取材に来ていた『しんぶん赤旗』の記者さん1名と講師の清水建夫弁護士(銀座通り法律事務所)。
清水建夫弁護士による最低賃金法の減額特例についての大まかな説明の後、参加者(障害者労働組合の組合員の皆さん)による報告・意見が交わされた。

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