4・25「ILOハラスメント禁止条約を批准しよう〜ハラスメント対策後進国と呼ばれないために〜」報告/5・19「職場のハラスメントホットライン」のお知らせ

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2019年4月25日(木)、この日の夜に予定が入っていたのですが、急遽キャンセルになったため、「はて、どうしようか…?」と思っていたところ、日本労働弁護団が主催する「ILOハラスメント禁止条約を批准しよう〜ハラスメント対策後進国と呼ばれないために〜」集会が参加費無料(!)で、連合会館(旧総評会館・東京都千代田区)で開催されていることをTwitterで知り、参加しました。
私が東京23区部にいるという地の利もありますが、便利な世の中になったものです。

開始時刻よりも少々遅れて到着した会場(2F大会議室)には、ざっと200名程の参加者で席が埋め尽くされていました。知っている弁護士の方々や顔見知りの、日本労働組合総連合会(連合)を上部団体としない、労働組合関係の方々も参加しており、このように所属団体に関係なく、広く門戸が開かれた集会はありがたい限りです。

国際労働機関(ILOは、来る6月10〜21日にスイス・ジュネーブで開催される108回総会において、「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する条約が採択される予定です。現在(本記事執筆の2019年5月15日)は修正草案が示された段階にあり、その内容はこちらでご覧いただけます。
ILOはその基本理念を“Decent Work”に置いており、職場における暴力やハラスメント行為の禁止はその根幹に関わる極めて重要な取り決めであると言えます。この修正草案が採択された場合、広範なハラスメントを禁じた初めての国際労働基準となります。

一方、日本国内では、急増するパワーハラスメント対策のために、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、6回(2018919日)から13回(20181214日)まで集中審議され、「女性の活躍の推進のための対策及びパワーハラスメント防止対策等」が厚生労働大臣に建議されました。
今通常国会において、パワーハラスメント防止対策を含む。女性活躍推進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法の一括改正法(「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」)が衆議院を通過、現在参議院で審議中で、おそらく可決成立となる見込みです。

しかし、改正法案では、パワーハラスメントを「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義するのはいいとしても、防止策を使用者側に義務づける措置義務で十分なのか、また、中小企業には当面「努力義務」とし、施行時期を遅らせるのはいかがなものでしょうか?
労働者数の寡多に関係なくハラスメントは発生しますし*、むしろ少人数の職場の方が人間関係が自ずと濃密にならざるを得ず、職場でのいじめやハラスメントに悩み苦しむ人は、より深刻な事態に陥るのではないかと考えます。
私の所属する東京南部労働者組合(南部労組)も労働相談に訪れる人たちのほとんどが、解雇や未払い賃金、一方的な労働条件の切り下げ、過重労働と共に必ずと言っていいほどセクハラやパワハラがあったことを訴え、人格を傷つけられた自分に対する謝罪を求めたいという内容がほとんどです。私たち地域合同労組に相談に来る人たちは従業員が数名の小さな企業であり、私の勤務する日本知的障害者福祉協会事務局も同様なので、逃げ場のない小規模な事業場でハラスメントを受け、心身共にボロボロになって駆け込み相談に来る人たちの気持ちはよくわかります。

* 「平成24年度 厚生労働省委託事業職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」

さて、日本労働弁護団では、ILO条約を批准し、包括的なハラスメント防止のための法律を提言しています**

** 「職場のいじめ・嫌がらせ防止法の立法提言(第1次提言)」

殊に、労働者の権利規定や具体的な行為禁止規定を設け、指針や運用においても、実効性のある法律を制定していかなければならないとしています。
私は被害にあった労働者の心のケアに加えて、企業への法的な責任=罰則規定も盛り込むべきと考えます。

この集会で、登壇者の発言の中から実際にハラスメントを受けて、裁判闘争に打って出た事例や誰にも相談できずに泣き寝入りしてしまい、心に傷を抱えたまま過ごしている人の事例が紹介されました。

特に就活生や新入社員の女性へのセクハラは、どう考えても準強姦・強制わいせつとしか思えない性犯罪事案が含まれており、その被害を訴えた女性労働者への管理職らの報復が凄まじく、事実無根・無関係な職場での出来事を理由に退職に追い込まれた事例、パワハラ被害を訴えた労働者から事情もろくに聞かず、調査もせず、管理職らは「なかった」と言い張るばかりか、組織ぐるみで潰しにかかり、一挙手一投足を監視され、ICレコーダー***での録音はおろか、職場でメモを取ることさえ禁じられた事例などなど、聞いているだけでも堪えようのない怒りが湧き上がってくるものばかりでした。

*** この方は、このような職場の状況下でも、わずかにでもICレコーダーで録音していたことが裁判闘争での一部勝利判決を勝ち得た決め手となり、「録音は必須!」とのことでした。2015123日に、事務局長の末吉らに協会の「役員室」で難詰された際に「録音するなよ」と言われたこと、そして、2019年2月26日に『さぽーと』誌の次年度募集のリーフレットを巡って、協会管理職らとのバトルになった時も、私がICレコーダーで録音し始めたら、露骨に彼らが嫌がったことなど(こちらを参照)、もはや録音を嫌がるか否かが、パワハラ横行の“ブラック企業・団体”か否かの試金石と言えますね。

私自身も、協会でかつての事務局次長(当時)の末吉に受けた暴行・パワーハラスメントへの謝罪と反省、今後の防止策を団交議題とし、その解決を目指していますが、言い逃れる術がなくなった末吉は団交から逃亡。O常任理事は目撃証言があるにもかかわらず、「なかった」と勝手に結論づけるなど、協会も本集会で報告された事例を地で行く悪辣ぶりです。
近々、その当時の就業規則変更の実態と併せて、その時何が起こったのか全容を本組合掲示板ブログにUPしようと思っています。

本集会で報告のあった職場のハラスメントの類型の中に、「SOGIハラ」というものがありました。SOGIとは“Sexual Orientation & Gender Identity”の略で、「性的指向・性自認」に関わるハラスメントのことです。
私はLGBT問題に疎く、また、そのような指向がないためか、恥ずかしながらこの言葉を初めて知りました。被害を訴えられた登壇者の方の具体的な発言に、無自覚であった私も意識せず加害者になってしまっていたかもしれないと反省しきりです。やはり、当事者の声を直接聴くことは大切です。

本集会最後に、参加者一同によりILOハラスメント禁止条約を批准しよう!集会アピール」が採択されました。
ILOの包括的な職場でのハラスメント禁止条約が採択され、日本政府も批准し、さらなる国内法整備に着手し、一刻も早く、職場のハラスメントを根絶できる防止法が成立することが望まれます。

(2019.5.21追記)当日の集会をIWJが動画で配信しています。


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なお、日本労働弁護団は5月19日(日)10:00から17:00まで、「職場のハラスメントホットライン」を開設し、無料で電話相談を受け付けるとのことですので、職場のセクハラ・パワハラ・マタ(パタ)ハラ・カスハラ・SOGIハラ…etcで、誰にも相談できずに一人で悩んでいる方々は積極的に利用してみてはいかがでしょうか(私も電話してみようかな?)。

 日本労働弁護団 Phone 03-3251-5363


また、『労働法律旬報』2014年4月下旬号(No.1934)でも、「シンポジウム 職場のハラスメント防止法を作ろう!」が特集されています。登場するシンポジストの方の一部の報告・提言には私個人としては賛同しかねるものもありましたが、興味深い内容ではありますので、併せてお読みになられることをお勧めします。

…The end

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