不当労働行為救済申立・日本知的障害者福祉協会事件 第4回調査が、2018年8月30日(水)13:00から東京都労働委員会審問室において行われた。協会側は協会顧問弁護士とO常任理事、古屋総務課長、三浦政策企画課長。我々組合側は南部労組の仲間6名が駆け付けてくれた。
前々回の第2回調査、前回の第3回調査において、労働委員会からの和解提案に従い、労使双方から和解可能な条件を其々提出するということで、6月27日の第3回調査では、先ずは協会から不誠実団交に係る“今後の団交ルール”提案が書面で組合に交付され、それに対し、組合が検討した上で、組合側の求める団交ルールを提案。不利益取扱い・支配介入については、“職場内でのコミュニケーション改善・円滑化”提案に基づき、組合が検討・意見集約を行う段取りだった。…とその前に、この2ヶ月間のやり取りを記してみよう。
2ヶ月間の書面合戦
第3回調査の場では、“今後の団交ルール”についての提案は既に完成しており、直ぐにでも組合に提示されるとのことだったので、それをもって、7月12日を期限として組合が回答する…はずだったのだが、いつまで経っても協会から当該提案書面が届かない。もはや、検討する時間も、それに基づいた書面作成も時間的に不可能であったので、不誠実団交については、組合からの再回答要求と不誠実団交の解消を求めて、不利益取扱い・支配介入については、今後行われることのないように、“コミュニケーション改善・円滑化”に問題を一般化することなく、その前提となる不当労働行為事実の自覚と反省に立った上での前提条件を書面に認め、提出期日である7月12日に協会・労働委員会に提出した。
我が組合が提示した条件は以下のようなものである。
第1 被申立人協会事務局長の団交出席拒否による不誠実団交について
①末吉事務局長の団交出席拒否が協会会長の指示であるならば、いつ・だれが・どのような経緯で諮り、どのような根拠に基づき、その決定がなされたのか、組合からの申し入れ、回答要求に誠実に答えること。
②これまで団交出席を拒否したことについて末吉事務局長が組合に対し釈明を行い、協会は不誠実団交について反省すること。
③今後、原則として、末吉事務局長が団体交渉に出席し、団交議題に従い誠実に団体交渉を行うこと。
第2 被申立人協会事業課課長代理の組合への支配介入、並びに組合員への不利益取扱いについて
①水内事業課課長代理による組合員の起案文書破棄について、不適切な対応であったことを認めること。
②水内事業課課長代理の組合員への嫌がらせ・職場からの排除を直ちに改め、併せて、水内事業課課長代理が行った他の職員に対する組合嫌悪・組合敵視言動について、協会は水内事業課課長代理に対し厳重に注意と指導を行うこと。
はっきり言って、不当労働行為救済申立や前回の和解条件案から「謝罪」という文言を削除しただけで、これまでとほぼ変わらない内容である。(笑)
協会の組合嫌悪・組合敵視を糊塗する論点ずらしの土俵の上で闘うことはできないからだ。協会には同じ事を何度でも言うつもりではあるが、労働委員会には「また同じこと言っているなぁ、組合は…」と呆れられるかな?と思ったが、これ以上要求水準を下げる訳には行かない。
そうしたところ、協会(代理人である協会顧問弁護士)が忘れていた?のか、送付した翌日に協会提案の“団交ルール”案がファクシミリで組合宛に送付されてきた。一読、目を疑う酷い代物であった。従前の団交とは異なる新たな条件を抜き出して要約整理すると以下のようなものである。
・団体交渉の協会側出席者は、原則として協会の役員、顧問弁護士及び事務局長並びに管理職以上の職員とし、議題の内容に応じて決定するものとする。なお、団体交渉の内容が議題から逸れた場合には退席するものとする。
・組合の出席者は、東京南部労働者組合・日本知的障害者福祉協会支部の組合員及び東京南部労働者組合本部の支部担当執行委員とし、部外者は出席してはならない。
・相互の出席者は、原則3名以内とする。
・団体交渉時に、ビデオカメラ、ポイスレコーダー等の録画、録音機器を持ち込んでの撮影録音は原則行わないものとする。必要がある場合には、相手側の同意を得なければならない。なお、音声データ及び議事録並びにそれに類するものの公開はしないものとする。
・団体交渉の日時等は事前に関係者以外には公開しないものとする。
・東京南部労働者組合・日本知的障害者福祉協会支部の情宣活動及びブログ等において、個別職員への誹謗中傷とおぼしき内容を掲載してはならない。
明らかに、これまでの団交の実績的な積み重ねから大きく後退した、というよりも、団結権・団体交渉権への侵害行為=新たな不当労働行為を平気で提案してくる、その神経が疑われるものであった。しかも、我々組合の主要な要求である末吉事務局長の団交出席も担保されるのかどうなのかも疑わしい。特に、最後の誹謗中傷云々は団交とは全く関係ない。
片や、7月31日に組合宛に届いた“コミュニケーション改善・円滑化”提案もこんな調子のものであった。
「かねてより協会事務局においては、毎月、職員全員での観整会議を行っており、全体での運絡調整を図っているほか、必要に応じて適宜担当部署内で打合せを行っており、円滑な業務の執行に努めている。今後は相互のコミュニケー シヨンの活性化を図り、上席から積極的な声がけを行うなど、業務指示・報告の仕組みを改蕃し、より一層の業務の円滑化を図りたいと考えている。なお、事業課においては、上記の調整会饉の他、職員相互の情報伝達を密にするため、課内会議を随時開催するよう検討している。当会議の実施にあたっては、円滑に意見交換を行うために必要と思われる一定期間、総務課課長が立ち会うものとする。」
不利益取扱い・支配介入の件について、協会は一部認めているのにも拘らず、組合からの要求・提案には一切答えず、コミュニケーションや業務円滑化の一般的な方針しか記していない。こんなことは普通の職場なら、行政機関(準司法機関)である労働委員会=第三者機関に訴えられたから初めて取り組むようなことではなく、日頃の業務遂行の中で自然に行われるべきものであって、和解(即ち、労使双方が歩み寄って合意し、申立人が申立を取り下げることを意味する)の条件とすること自体が間違っている。しかも、水内事業課課長代理の支配介入発言や当該組合員の文書破棄という暴挙には一切触れられていない。
これでは到底、和解の道など探りようもない。
労働委員会での攻防戦
さて、申立人が控室で待機していると、久保労働者委員が入室され、協会の和解提案(特に不利益取扱い・支配介入の)水内事業課課長代理に件については、協会は全く回答していないことは問題であって、これについて協会に誠実に回答するように求めなければ先には進めないだろうことをお話された。至極真っ当な判断である。これについて、協会には誠実な回答を提出するように、これから調整を図るとのことであった。
1時間以上待機し、我々組合は審問室に呼ばれた。
金井公益委員から、不利益取扱い・支配介入の件と職場内でのコミュニケーション改善・円滑化については不十分であるので、再度協会から組合からの提案にちゃんと答えるように再考されたものが再提出されることを告げられた。しかし、主要な聞き取りは、新たな団交ルール作りが中心だった。
当該申立人としての団交ルール作りに関しての主張は極めてシンプルなものであり、第1回・第2回団交時のように末吉事務局長が出席し、誠実に団体交渉を行うこと、即ち、団交出席拒否などという不誠実団交以前の状態への復帰である。ところが、金井公益委員から途中で話を遮られ、「前回も申し上げたように、新たな団交ルールを確立すること。過去の事よりも未来指向で和解を進めようという話ではなかったのですか?」と議論の煮詰りに少々苛立ちを見せている様子。前回もそうであったが、ここで和解の道を探らないと職場での当該の立場が益々悪くなることを心配されているようであったのは、私の立場を慮ってのことであるので、それはそれとして有難い事ではある…が、やはり、協会には過去の反省を踏まえてもらわない訳には行かないのだ。
その点を我々はさらに強く主張し、補佐人である組合員からの抗議や疑義の発言に、金井公益委員は終始硬い表情であったが、どうも誤解があるようなので、自主団交において団交ルール破りを最初に行ったのは協会であり、我々はそれに抗議しつつも臨機応変に対応してきていることを説明することで、やや誤解も解けたよう見えた(だといいんだが…)。

東京都労働委員会のある東京都庁38階 男子便所からの眺める東京の街並み
一旦退室し、2度目に審問室に呼ばれたのは次回日程調整のためであった。協会からの再提案を受けての5回目の調査ということになったのだが、また、1か月以上後か…これ以上やっても無駄じゃないか? もういい加減にして早く審問(証人出席での言論戦)に入りたいという思いが胸に去来する。
公益委員は当該の置かれている職場の状況を知らないので、実情を理解できないのは已むを得ないが、協会(特に不当労働行為を働いている張本人達とそれに付き従う正義感の欠如した者達)は当該組合員を排除したい一心であり、和解となったからといって状況が良くなることは現状とても考え難いことだ。この辺はこれからの詳細な陳述書で実態をさらに詳らかにしていかなけれはならない。
次回、第5回調査は、10月9日(火)10:30からで日程調整を行い、第4回調査を終えた。
時限ストライキで闘う
実はこの日、協会では、第2回「月刊誌『さぽーと』の在り方に関する検討会」という会議が13:30からあった。この会議、普段の編集出版企画委員会(『さぽーと』編集会議)では議論できない『さぽーと』誌の基本的な編集方針から、下降線を辿る研究会員(会員施設勤務職員の購読者)数に歯止めをかける方策を練るための会議だ。
8月7日の第1回会議には当該組合員も編集実務者として出席したが、8月30日の午後に都労委の調査期日が入っていて、当該組合員(ばかりではなく、常任理事や管理職も)が出席できない日にも拘らず、第2回会議の会議日程を決めるという、露骨な業務外しを協会は行ったのだった。何故、不当労働行為を申し立てられているのかわかっているのか?
この件については、別記事で少し触れるとして、不当労働行為の当事者なのに、労働委員会からも逃亡を図っている末吉事務局長は、当日も「ぼくちゃん、関係ないもん!」とばかりに、当事者意識ゼロで余裕ブッこいているようなので、少しは自覚してもらうためにも、都労委に出かける前に「末吉さん!はい、これ。5時間の時限ストライキに入ります。都労委出席のためにね」と「ストライキ通告書」を直接手渡した。困惑した顔をしつつも「はい」と受け取った。本当はあんたが出てこなきゃならないんだぜ。■
…The end
なんと。ゆにおん同愛会はオブザーバー参加できなくなるんですか?仮に組合側弁護士が参加を希望しても部外者だというのでしょうか?部外者を一方的に規定するのは間違いで、出席資格を労使で話し合って決めるのが原則。これまでそうしてきたからゆにおん同愛会がオブザーバー参加できたはず。ずいぶん後退してますね。
議題から外れたら退席というのも・・・。議長がいるわけではないので、議題から外れたかどうか誰が判断するのでしょうか。協会側?仮にそれたとして、退席してしまってその後議題に戻ったら協会側は団交に戻って来るのでしょうか?
日本知的障害者福祉協会は団体交渉を軽んじているとしか思えません。
当初、公益委員から「この新しい団交ルールに組合としての見解を書面で」というお話が出ましたが、出すには吝かではないものの、ほとんど受け入れられる内容ではないので、これについて協議しても時間の無駄であることを伝え、結局はこんなものは受け入れられないということで話は終わりました。
それにしても、「部外者」(連帯共闘関係にある労働組合であって、かつ協会会員でもある関係者でも?)を排除し、団交の人員制限をかける、録音するな、団交告知するな、団交報告するな、使用者批判をするな…と、協会の隠蔽体質がよく表れています。よほど世間に明らかにされると都合の悪い事実があるのでしょうね。これで公益法人なんだから笑っちゃいますよ。
労働基本権や集団的労使関係、労使対等原則について、協会は全く理解していないという証左です。
なぜ原則3名なのか?なぜ録音禁止なのか?なぜ議事録公開できないのか?なぜ団交日程は非開示なのか?なぜ団交ルールとは関係のない組合の情宣活動に介入してくるのか?
同愛会管理者は、組合同様に録音を取ります。当たり前です。言った言わないの話になると後でトラブルになるからです。議事録は組合側が作成したものを第①案として法人に提示。法人側に異議があって修正した場合は②案。そうやって共通理解のもとに議事録を作成します。その際録音は労使双方にとって必要不可欠なものです。
和解案なのに組合の情宣活動を制限するような提案が、組合活動への支配介入という不当労働行為にあたるということを指摘する協会側弁護士はいないのでしょうか?
弁護士でも労働法を理解しているとは限りませんからね。これまでの協会との団交でもそうですし、協会の答弁書もただ協会の言い分を代筆しただけのようですし。
これまでの団交でも協会は自前で録音しているんですよ。組合は録音に基づいて団交報告を公開周知しています。これは正当な組合活動の一環です。組合が団交結果について、何か虚偽や捏造報告しているなら、正式に抗議申し入れや反論すればいいんです。しかし、これまでそのようなことはありませんでした。
要は、拒否はできないからやるけど、やるならコソコソ周りには知られずにやりたいってことでしょうが、そうは問屋が卸しません。笑