東京では今冬、初めて本格的な雪の降る中、2019年2月9日(土)13:30から、中野商工会館大会議室に於いて「2・9刑法改悪阻止!保安処分粉砕!全都労働者実行委員会 総会・集会」が開催された。
「刑法改悪阻止!保安処分粉砕!全都労働者実行委員会」(以下、全都実と略)は、「医療観察法廃止!全国集会」(以前の集会報告記事はこちら)の主催団体「医療観察法を許すな!ネットワーク」に参画しているので、その活動は屡々報告は耳にしていたものの、実はこの会に参加するのは初めだった。…が、参加者の顔ぶれを見るといつも他の集会や争議現場でお会いする労働組合の方々で、ほとんど知らない方はいなかった。(笑)
今回の総会は東京・中部地域労働者組合のIさんの司会で、基調報告は連帯労働者組合の組合員であり、精神障害の当事者でもあるYさんであった。
基調報告は、障害者差別・優生思想等の障害者を取り巻く問題や昨年、再犯防止策を巡って障害当事者から批判が相次ぎ、結局改正案提出見送りになった精神保健福祉法改悪の再上程阻止の運動、心神喪失者等医療観察法による予防拘禁・保安処分、法制審議会少年法・刑事法部会での保護観察処分強化、再犯防止推進法反対、2020年東京五輪に向けた治安強化の問題等々、広範囲に亘り、とてもここでは紹介しきれない。
今後、本組合掲示板ブログでも、いくつかトピックスをピックアップしてご紹介できればと思う。
さて、集会部分は「職場と過労うつ体験──休職・復職など──」と題し、鬱で休職し(職場復帰を果たした)当事者である、三多摩合同労働組合・鶯啼庵と東京南部労働者組合・日本知的障害者福祉協会の当該組合員2名からの提起であった。
最初に発言したのは、三多摩合同労働組合(三合労)の組合員のM氏。M氏は、有限会社慶徳屋が経営する飲食店「懐石 鶯啼庵」(東京都八王子市)の調理師で、過重労働が原因で鬱を発症し、労災認定を受け、現在休職中である。
自らの生い立ちから、料理人として歩んできた半生と飲食業界の実情が語られた。そして、(有)慶徳屋「鶯啼庵」では人件費削減で正社員が減らされ、自身の給与の減額も強制的に同意させられたという。人員不足の為、長時間労働・サービス残業の常態化、年次有給休暇も自由に取得できず、鬱で休職に至る前の数週間は仮眠程度の睡眠時間で連続勤務を余儀無くされたことなど、あまりにも酷い労働実態があったことを切々を訴えられた。
2年程前に三合労に加入し、過労鬱で労災を被ったことへの謝罪と未払い残業代の支払いを求めて、会社に団体交渉を要求し、3回の団交が行われたようである。…が、ありがちな対応だが、団交では弁護士任せで誠実な回答はこれまで一切ないという。
但し、M氏の労災申請が切っ掛けとなって、労働基準監督署の指導が入り、いくらか“改善”も見られているとのことではあったが、要求貫徹に向けて、八王子駅頭で情宣活動を行い、道行く人々のビラ受け取りや反応も良く、現在、果敢に経営者の責任追及を行っている。*
* 本集会の翌日の2月10日には、当該含め三合労の仲間、南部労組・福祉協会当該の6名で八王子駅頭情宣と初の店舗前情宣を行った。
三合労・鶯啼庵の情宣ビラには「弁護士任せで、都合のいい時には“偉そう”にして、都合が悪くなると他人に丸投げして、当事者と向き合おうとしません」とあったが、いやはや、我が福祉協会事務局の対応と全く同じではないか。
鬱でどれだけ辛い日々を送っていたのか、嘗て自分も経験があるが、病気の中で積極的な行動に打って出ることが心身共に如何に大変な労力が必要かが痛い程よくわかる。
また、M氏の隣で発言を聞いていたが、M氏の手元にはぎっしりと文字で埋められ用意された発表原稿があり、自身の過労鬱体験と共にその真面目で几帳面な人柄・性格が窺えた。**
** 後編で紹介する鬱になりやすい人の病前性格である「メランコリー親和型」を参照。
過労鬱で休職中の当該M氏には、何としても諸要求を勝ち取り、職場の労働条件が改善された暁には、職場復帰を果たし、プロの料理人として腕を振るって欲しいと心から思う。■