職場に過半数労働組合がない場合(今時、過半数労組があること自体珍しいが)、労使協定や労働者の意見書、各委員会の労働者代表として、労働者代表を選出しなければならないことがあります。
日本知的障害者福祉協会事務局でも、長らく労基法違反状態であった事態を解決すべく、三六協定締結のための労働者代表が初めて2016年12月16日に選出されました。しかし、数名から代表の選出方法を挙手ではなく、秘密選挙とすべしという意見が出されたにもかかわらず、勝手に準管理職の課長代理が議長役をやり始めたり、意見書を提出した者を威嚇するような態度を見せたりと、職場内の権力関係を考慮すると、職員の自由意志による選出が行われたと果たして言えるのか疑問が残るものでありました(事の顛末はこちら)。
そこで、お座なりな労働者代表選出ではなく、ある福祉施設の事業場での労働者代表の理想的な選挙管理規程が、労働組合「ゆにおん同愛会」のブログに紹介されていたので、本来のあるべき真に民主的な労使関係を構築するためにも、ここに選管規程のモデルケースとして転載、紹介させていただきたいと思います。
労働者代表選挙管理規程
(総則)
第1条 ○○○○(以下「事業場」という)における、労働基準法及び関係法令に基づく「労働者の過半数を代表する者」(以下「代表」という)の選出は、この要領に則って行う。
(代表の定数)
第2条 代表の定数は1名とする。
(選出方法)
第3条 代表の選出は、投票による選挙でおこなう。
2 代表に立候補する者は、「管理職か実質的に管理的立場にある職員」以外の従業員でなければならない。
3 投票総数の過半数の得票のあった者を代表とする。
4 立候補者が1名の場合は、信任投票を実施する。
5 立候補者が3名以上で、いずれの立候補者の得票数も投票総数の過半数に満たない場合は、最下位得票数の立候補者以外の立候補者について再投票を実施する。再投票をおこなってもなお、いずれの立候補者の得票数も投票総数の過半数に満たない場合は、同様の手続きを繰り返すものとする。
(選挙管理委員会の設置)
第4条 代表選挙の公明性を保ち、適正を期するために、事業場に選挙管理委員会(以下「委員会」という)を置く。
(選挙管理委員の選任)
第5条 選挙管理委員(以下「委員」という)は、事業場の全従業員のなかから公募し、事業場の管理者が任命する。
2 委員の定数は、2名以上とする。
3 委員の任期は、任命された日から1年間とする。
4 委員に欠員が生じた場合で、代表の選挙をする必要が生じたときは、1項に準じて後任の委員を選任する。この場合、任期は前任者の残任期間とする。
5 委員長は委員の互選によって決定する。
(委員の事務)
第6条 委員はつぎの事務を執り行う。
一、選挙の公示
二、立候補の受付、立候補者の公示
三、投票の管理
四、開票
五、選挙結果の公示
六、その他選挙に必要な事務
(投票)
第7条 投票は、委員会の定める投票用紙による直接無記名投票でおこなう。
2 投票することができるのは、非常勤契約職員を含めたすべての職員とする。
3 投票は一人一票とする。
4 投票は選挙権を持つ本人がおこなうものとする。
(開票の立会い)
第8条 立候補者及び投票者は、開票に立ち会うことができる。
(開票結果の公開)
第9条 委員会は開票結果を速やかに公開しなければならない。
(開票結果に対する異議申し立て)
第10条 立候補者は、公開された開票結果に異議がある場合は、開票結果を知った日の翌日から起算して14日以内に委員会に対して異議申し立てをすることができる。
(代表の任期)
第11条 代表の任期は、選任後から翌年の3月31日までの間とする。
2 同人が任期途中で退職等により代表に該当しなくなった場合において、代表選出の必要性が生じた時は、第3条に準じて選出し、任期は前任者の残任期間とする。
(代表の役割)
第12条 代表は、次の各号に定める役割を遂行する。
一、賃金控除協定の締結(労働基準法第24条但し書)
二、時間外労働・休日労働に関する協定の締結(労働基準法第36条)
三、変形労働時間制に関する協定の締結(労働基準法第32条の2)
四、就業規則等を作成または変更する場合の従業員意見の聴取、意見書の作成と添付(労働基準法第90条)
五、育児・介護休業に関する協定の締結(育児介護休業法第6条)
六、安全衛生委員会の労働者側委員の推薦(労働安全衛生法第17条の4)
七、高年齢雇用継続給付、育児休業給付及び介護休業給付の申請を事業場の管理者が本人に代わりおこなうことに関する協定の締結(雇用保険法施行規則第101条の8、第101条の15、第102条)
八、高年齢雇用継続給付、育児休業給付及び介護休業給付の申請に係る承諾書の記載(雇用保険法施行規則第101条の8、第101条の15、第102条)
2 代表は、事業場の管理者からこれらについて求めがあった場合には、従業員の意見を聞き、迅速かつ誠意を以って対応しなければならない。
(周知)
第13条 事業場の管理者は、代表が選出された場合、及び同代表者と協定を締結した場合には、その内容を掲示、回覧等の方法により周知させるものとする。
年 月 日
労働者代表選挙管理委員会
もちろん、事業場の規模や業態によって、この方法がベストとは言えないかもしれません。また、本来は各協定や意見書提出、委員会の労働者代表は個別の案件に従い、個別に選出されるべきものです。
真に健全な労使関係を築くために、労使双方の協議により、このような不断の努力と地道で粘り強い交渉で労働者の権利を獲得する姿勢について、学ぶべきことは多いと言えましょう。
我々南部労組・福祉協会も日本知的障害者福祉協会事務局の民主化に向けて、決して諦めることなく、これからも労働者の権利確立のために闘いを継続していきます。■
† 転載元 「36協定無しで残業させれば違法です。」†
…The end