[職場闘争]不当労働行為救済申立・日本知的障害者福祉協会事件 第18回調査報告 & 第19回調査告知

不当労働行為救済申立・日本知的障害者福祉協会事件 第18回調査が、2020年8月27日(木)10:30から東京都労働委員会審問室において行われた。協会側は協会顧問弁護士とO常任理事、古屋総務課長、三浦政策企画課長(兼事業課長)。我々組合側は当該組合員の他、南部労組の仲間4名が集まってくれた。
前回第17回調査は3月24日で、この間5ヶ月もの時間が経過した。この間の経緯については、こちらの告知でも述べた様に、新型コロナウイルスの感染拡大により、ほぼ全ての東京都労働委員会の審査等業務がストップしていた所為である。

前回第17回調査は本事件申立事項の水内事業課課長代理による我が組合・組合員への不利益取り扱い(労組法7条1)及び支配介入(労組法7条3)についての部分和解の協定書の調印が主であったが、この間(2020年3月24日時点)に行われた、2020年2月7日の第9回団体交渉で、相変わらず事務局長の末吉が団交からの逃亡を図り、協会はそれについて苦しい弁明を言い募っており、協会は果たして誠実な交渉義務を果たす意思があるのか? 自主的な労使間の紛争を解決する気があるのか? を労働委員会三者委員に訴えたところ、金井公益委員から協会側にこの件についての和解の方向性を探ることは可能か否か、今後、我が組合が求めている「然るべき」交渉担当者として事務局長の末吉を団交に出席することの可能性について文書回答が求められたのだった。

本調査に先立って、都労委事務局に問い合わせたところ、協会からは回答書面が届いているとのことだったが、これはまだ担当三者委員にも開示しておらず、調査当日に協議するとのことだった。
はて? 協会が使用者委員から文書回答を求められて、“内輪”での資料なら百歩譲って、解らなくもないが、前回調査の場で公益委員から文書回答を求められているのであるから、準備書面として事前に我が組合にも提出されるものとばかり思っていた。

不可解に思いつつも、協会が提出しそうな書面の内容は概ね察しはつくが、正確にその内容を知ることができなければ、どの様に戦略を練って本調査に臨むか。我が組合は協会のその回答次第で対応を検討し、その後の2020年6月26日の第10回団交でも依然として協会の団交対応に変化はなかった為、不誠実団交の実態を追加・補充した組合側の書面の提出を重点目標とすることとした。

我々は労側控室で待機。暫くして、審問室に呼ばれた我が組合は、協会からどのような回答書面が提出されたのか内容を尋ねたところ、労働委員会三者委員も当日に初めて目を通したらしく、金井公益委員は「協会からは文書は提出されているが、和解は困難ということです」とのことで、我が組合から「どの様な理由で協会はその様な主張をしているのか?」との問いかけには、言葉を濁しつつ、「それは協会の意向で委員会内部に限るということで、申し訳ないが、その理由はここでは開示できない」とのことだった。

これには唖然とし、暫し言葉を失った。理由も公に出来ない“理由”とは何か? それでは我々組合は協会の主張に対して、今後の審査を見据えて、どういう判断を行えばいいのか解らないではないか。 しかも、労働委員会の審査の透明性にも疑義を挟まざるを得ない事態である。これには、その理由を申立人に開示できない“理由”について、申立人である当該は勿論のこと、我が組合の補佐人から抗議の声が上がった。
しかも、「これは書面ではなく、単なる情報」なので「協会は労働委員会以外の組合側への内容の公開はしないでほしいと言っている」の一点張り。申立人組合が協会のその“情報”を知ることができないならば、我々申立人組合はどんなデタラメなデマ情報を流されていても反論すらできない。労働委員会は労使対等の立場に立ち、労働者の団結権を擁護し、団体交渉を促進・助成することが目的ではないのか?! これに強く抗議をしたところ、協会からの“情報”は本事件審査の考慮とはしないと明言したものの、どうしてそれを信用できようか。
それにしても、公開できないならば回答などしなければいいだけだ。公開できない様なものを提出する方も提出する方だし、受け取る方も受け取る方である。

我が組合は協会に団結権・団体交渉権を侵害され、組合嫌悪・組合敵視の職場の真っ只中にいて一人闘う当該組合員は、書面提出によって、どの様な不利益かつ差別的な取り扱いをされるか、常に職場の状況と自己の立場を鑑み、その鬩ぎ合いの中で、極めてシビアに情勢判断を行い、それでも正常な労使関係と労働者の権利確立を目指す為に、臍を固め、事実に基づいた書面や書証を公開し、闘っているのである。
これこれこういう証拠があるけど「相手方には黙っていてね」などということが許されるならば、こちらももっと決定的な証拠はいくらでも出せるが、公の場での正々堂々とした闘いに徹するため、已む無く留保しているし、その様な卑怯な手段に訴えることなど考えも及ばないことだった。

兎に角、協会の卑怯なやり方と労働委員会の姿勢には断固抗議したい。「これはただの情報です。だから我々も本事件審査で考慮しないので気にしないでください」などと言うまやかしは断じて許されるものではない。この記事を書いている今でも怒りで腹の虫が治まらない。
どの道、協会は不誠実団交については和解する気などないことだけは解ったので、第9回・第10回団交での事実を主とした、準備書面を928日までに提出し、協会からの反論をもって次回期日の調整となった。

それにしても、協会は何故組合に言えない様な理由があるのだろうか?
考えられることとして、例えば、ヒラのペイペイの職員のくせに当該組合員は生意気であるという主観的な評価や、かつて都労委で言っていた「髭を生やしている」から仕事干しされて当然などという人権無視甚だしい当該組合員への誹謗・中傷の類が記載してあり、労働委員会三者委員もこれは組合には言えないと、我々に斟酌したのか? または、事務局長の末吉は無能であり、団体交渉に出席しても、まともに交渉などできない…と協会が言ってきたとか? 内容が解らないので、公開出来なさそうなことはこんな感じか? まぁ、そんなことではないだろうと思いたいのだが…。
しかし、(協会にとって)正当な理由があるならば、準備書面でも求釈明への回答でも公開前提の書面を提出するべきである。極端に個人情報・プライバシーに関わる事柄ならば話は別だろうが、協会も公益財団法人ならば公益に資する団体であり、国民の信頼を得なければならない法人にも拘らず、公開できない様な主張などがあっていい筈がない。

次回第19回調査は、2020年10月7日(水)16:00からとなった。おそらくこれが不当労働行為救済申立 福祉協会事件の最後の調査になることだろう。


ここからは余談である。

本調査で約5ヶ月ぶりに東京都庁を訪れたら、入庁訪問者カードの手書きの記入用紙が、すべて(たぶん)スタイラスペンでの電子申請用マシンにリプレイスされていて面喰らった。
手書きするのもめんどくさいといえば、めんどうなのだけど、こういうのに慣れていない人にはバリアとなるのではないか。実際、私も案内の係員氏に教えてもらって入力を終え、電子申請用マシンから「ジージー…」と機械音を発しながら出てきた二次元バーコードが印字されたロール紙で入庁手続きができた。慣れれば便利かもしれないが、この様な電子機器での手続きが不得手な人や何かしらの障害によりバリアとなる人に対しては、従来の方法も残してあげてはどうかと思うのだが? さすがに今時の電子機器だから、それ相応のアクセシビリティ機能はあるかもしれない。また、これまでの手書き用机と用紙はどこかに設置されているのかもしれないけれど、ぱっと見、見当たらなかった。

これで思い出したのはケン・ローチ(Ken Loach)監督の映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」(原題 “I, Daniel Blake”, 2016)だ。

持病を抱えた高齢の失業者ダニエルはコンピュータを扱うことができない。傷病手当の申請と求職活動をするダニエルは、コンピュータ端末がずらりと並ぶ役所で途方に暮れる。どうしたらいい?と役所の職員に尋ねるも、オンラインでの申請しか受け付けないと職員に冷たく言い放たれるシーンがある。
現代社会のデジタル・ディバイド(digital divide)による情報格差が、生きづらさを抱える人への適切な社会資源の利用を妨げ、貧困を生み出している一端を描いている。

ご覧になったことのない方には、是非ご視聴をお薦めしたい傑作映画である。

…The end

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