こちらの記事にも書いたが、協会宛に組合から抗議書面を送っていた回答が1月31日に届いた。このような回答であったが、意味がよくわからない。
給与規定改定については、12月16日に職員の皆さんから労基法90条に基づいて労働者代表を含む皆さんから意見を聴き取れば足り、36条協定締結を受けた改定として、後に労基署に届け出ても良いと、顧問弁護士から助言を受け、本年1月5日に、職員に改めて意見を求めました。
要するに職員に意見を聞いたらそれでいいのか? というか、1月5日の職員会議「事務局調整会議」で意見など求められてはいないし、労働基準監督署への届出など一言も言わなかったでしょうが…。はぁ…??
就業規則については労働基準法第89〜93条に定められている。
(作成及び届出の義務)
第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
2 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
3 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
3の2 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
4 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
5 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
6 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
7 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
8 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
9 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
10 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
(作成の手続)
第90条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
このように、「就業規則」という名前でなくても第89条にある事項(必要記載事項)が記載された規程であれば、就業規則同様の変更手続きが必要である。また、作成・変更にあたっては第90条にある労働者代表の意見聴取と意見書添付が義務付けられている。
それが、協会からの回答では、三六協定締結時の労働者代表含む職員から意見を聞いて、それで三六協定締結を受けた変更だから労働者代表の選出・意見書添付なしで労基署に届け出てもいいとは。いやはや、労基法の該当箇所を読めば誰でもわかることなのに協会も顧問弁護士も何かを調べるということをしないのか? 今時はインターネットにつながっていれば、簡単にweb検索できますよ。(笑)
1月5日の「事務局調整会議」の場でも、前回記事でも、当該は広い意味で「労使協定」や「労使協議」と口走ってしまったが、本来、就業規則は使用者側に制定権がある。菅野『労働法』にはこうある。
「…使用者側の一方的な制定権を前提にして単に意見を述べる権利にすぎず、…労働者代表機関の共同決定権(同意権)までに至っていないのはもちろん、使用者の協議義務を課す意味での「協議権」にも至っていない。
……
「意見を聴かなければならない」とは、文字どおり意見を聴けばいい(諮問)との意であって、同意を得るとか協議をするという意味ではない。」 菅野和夫(著)『労働法 第11版』p.192 弘文堂 2016
協会管理職は菅野『労働法』など知らないだろうが、協会顧問弁護士ならばこの辺を根拠にして、重箱の隅を突くような反論を行ってくるのではないかと身構えていたが、どうやら買いかぶり過ぎたようだ。
とは言え、この解釈は単に労基法上の規定であり、団体的労使関係において、労働者側の意見を就業規則等に反映させることができないわけではない。労働組合が就業規則の内容について団体交渉を要求した場合、賃金はもちろんのこと、労働者の労働条件に直接関わる事項は義務的団体交渉事項であり、使用者側はそれに対して誠実に応諾する義務があるからである(労組法7条2号)。よって、労働者側が就業規則等の変更について労使協議を挑むことは可能なのである。
さて、こんな意味不明な回答を組合宛に送り、実際に2月1日の職員会議「事務局調整会議」で何が行われたか。
会議終盤、末吉事務局長が1月5日に配布した改定職員給与規程は「協会顧問弁護士の助言により」(またかよ…)労働者代表の意見書を付けて労基署に届出ます、と。そして、驚くべきことに「三六協定締結したときの労働者代表のIさんに意見書をお願いしたいんですけど、それでいいですか」と言い出した。これには呆れた。労働者代表は選挙や挙手などによって選出された過半数を代表する労働者(労基則6条の2)でなければならず、これに反して選出された代表は労基法等の適法な過半数代表とは認められず無効である。前回のデタラメな就業規則変更手続きを再び繰り返そうとしているのだ。無知無反省にも程がある。
怒る気にもならず「管理職が指名するのは良くないんじゃないですか?」と当該が指摘したら、「いや、指名するつもりではなくて…ではみなさんで決めてください」と言って会議室を退室しようとしたが、「選出権はあるんだからいればいいじゃないですか」と当該が言ったら「公平にやった方がいいと思うので…」と言って出て行った。本当ならば、会議に出ていなかった臨時職員も労働者代表選出に参加しなければならないのだが、脱力してしまって指摘する気力も萎えてしまった。結局、前回同様な感じで決まり、Iさんの意見書添付したようだが、今回はさすがに労働者代表のIさんに労基署に届出に行けとは言わなかったようだ。(笑)
それにしても組合宛に寄越した回答は何だったのか。前回1月5日の「事務局調整会議」で当該が指摘しなかったら、たぶん変更した給与規程を配布しただけで終わっていただろう。私から指摘されたことについて調べてみたら確かにそうだったので、適法な手続きを踏むことにしました、とは絶対に言わないこの卑小な態度。先月の「事務局調整会議」であれだけ言い張っておきながら、その後、当該の指摘が正しいことに勘付いたらしく、何やら事務局長・各課長代理連中は役員室に篭って長時間密談してるわ、各課長代理は3人揃って協会顧問弁護士のところに出向くわで、時間と経費と人件費の無駄遣いも甚だしい。この実態は多くの協会会員に知ってもらいたい。
また、この「事務局調整会議」では、3月にハラスメント研修(?)を開催することも予告された。それは結構だが、協会におかしな指示・助言を行っている協会顧問弁護士のH氏で果たして大丈夫なのか? パワハラ研修もいいが、協会管理職は“まともな”社会保険労務士から労務管理研修を受けた方がよろしいのでは? 公益法人で全国団体の本部事務所なんだからさ。
このたびの件で、益々労働者の権利確立・チェック機関としての我が南部労組・福祉協会の監視の必要性を痛感した。このままでは協会事務局が無知なままに、コンプライアンス無視のブラック団体の道を突き進むことは間違いない。職員有志の組合加入をあらためて訴える!一緒に民主的で風通しのよい、安心して働ける職場を築いていこう!!■
…The end
法律学者が「協議権はない」と解釈したとしても、労働者がその解釈を基準にして考える必要はないわけで、職場のあり方は労使対等で話し合って決めるのだという、生活者としての立場に立つのが重要だと私は思います。
そもそも、「意見を聴く」というのは、一般社会の常識からすれば「相手のその意見を尊重する」ということですから。それからすると、ここに書かれている「団交議題に乗せて話し合う」「使用者はそれに誠実に応じる義務がある」というのは、社会常識に則ったあり方だと思います。
ありがとうございます。法律どうこう以前に、使用者側に労働者の権利や良好な労働環境に心を配る姿勢があるならば一方的な作成や変更などできないはず。一応、労働局も就業規則作成の手引きで「意見を聴けばいいってわけじゃなく、労使対等な立場で作成して、労働者の意見は尊重しなさいよ」と言ってますから。こういう正論が通じないのは◯ラック企業と言われても仕方がないですね。
昔、『ノーマ・レイ』という映画があった。紡績工場で組合を作ろうと頑張っている女性の主人公が、「UNION!」と手書きで書いたプラカードを高々と掲げて机の上にスックと立つシーンが、とてもかっこよかった。それを思い出した。
お知らせいただき、ありがとうございます。「ノーマ・レイ」観たことありませんでした。観てみます。^^Y