[日々雑感]明るみに出た障害者雇用代行ビジネスの問題〜『愛護ニュース』2023年2月号「浜松町から」批判〜【後編】

「令和元年度 相談支援・就業支援セミナー」に障害者雇用代行ビジネス企業を講師として招いた協会は会員からの抗議・批判に答えたのか?

『愛護ニュース』2023年2月号(1面)

さて、ここから(株)エスプールプラスと協会の関係について、当該組合員知る裏事情を少し紹介し、『愛護ニュース』2023年2月号「浜松町から」で協会事務局長の末吉がこの問題について、どういうつもりなのか、他人事に様にいけしゃあしゃあと言及している事に苦言を呈したい。

正確な日にちは覚えていないが、或る日、協会事務局員の部会担当者から「xxさん(当該組合員のこと)。部会のセミナーの講師に協会紹介として資料を渡したいので、『さぽーと』誌を数冊ください。」と言われた。
そういう事はままあるので、その部会担当者に『さぽーと』誌を渡し、気になったので彼に「その講師って、誰?」と尋ねたところ、返ってきた言葉は「エスプールプラスという会社」との事だった。

前編で述べた様に、同社のビジネスモデルに批判的だった当該組合員は驚いて、「え〜?何でそんな賛否が分かれる企業を講師として呼ぶの?批判が来るんじゃないのか?」と言った。
部会担当者らは知っているのか知らないのか(その時の感じでは判らなかった)“なんで、担当外にこんなこと言われなきゃなんないんだ”と怪訝な顔というか、“またメンドくさいこと言っている”と嫌な顔されたが…まぁ、当該組合員が何言ったって聞く耳持たないのはいつもの事なので、当該組合員としては“まったく…何考えてんだ… – -#”と思うしかなかった。

ところが、こう思っていたのは当該組合員だけでは無かった様で、この企業に講演させることについて協会に対し協会会員から強い批判・抗議があった事を、協会事務局内部からの情報では無く、外部からの情報によって後で知った。

…で、2019年10月15〜16日「令和元年度 相談支援・就業支援セミナー」が開催され、初日の講演に(株)エスプールプラスの代表の講演が行なわれた。

このセミナーで司会進行を行なったのが事務局長の末吉である。
この時に末吉は何と言っていたのか。

「「障害者雇用の新たな展開を目指して〜多様な働き方での意思決定支援と地域連携〜」をテーマに株式会社エスプールプラス社長…様よりご講演を賜りたいと思います。それではよろしくお願いいたします。」

と、当該組合員はセミナーには参加しなかったが、後に参加者から聞いた話によると、この様に宣っていたそうである。
“障害者雇用の新たな展開”っちゃあ…そうだろうし、“多様な働き方”…あーそうですか…。

司会進行だから、そう言うしかない…のかもしれんが、しかし、『愛護ニュース』2023年2月号の編集後記的コラム「浜松町から」で彼は何と言っていたか。
この中で触れられている内容は単に報道を引き写しただけのものだが、

「…この中で、昨今の障害者雇用率を代行するようなビジネスが広がっているとの意見もありました。」

「障害者雇用率を代行する」って、なんか変な表現だが、この様にしれっと言って退けている。
でも、ちょっと待て…

えーっと、あの〜…で、何なの?これで終わり?

先に述べた様に、令和元年度 相談支援・就業支援セミナーに、障害者雇用代行ビジネスとの批判もある(株)エスプールプラス代表を講師に招いた協会に、当該組合員と同じ思いを抱いている参加者・協会関係者から抗議・批判があった事については触れもせず、その抗議・批判に協会がどう対応し、どう総括しているのかにも言及していないとはどういう事だろうか。

更にこのコラムの落ちで、

「高い数値目標を掲げ、関係者が協力して進めていくことは大切ですが、今後、これに並行したサービスの質の議論に期待したいと思います。」

と、労働分野も福祉分野も数値目標が上がるのはいいけれど質も大事だね!…という事を言いたいのは解るが、「議論に期待したい」って、当事者意識が欠落したまるで他人事ではないか? この程度の事なら協会の事務局長じゃなくても誰でも言えるだろ。

繰り返しになるが、第7期障害福祉計画の成果目標は別議論なので取り敢えず脇に置いておいても、障害者雇用率云々で代行ビジネスが…という話題に触れるなら、先ずは障害者雇用代行ビジネスについて協会はどういう見解を持っていて、協会主催のセミナーにその企業を講師として招いたことに対する抗議・批判があった事に対して、協会はどう答えたのかを詳らかにする必要があるんじゃないのか?

令和元年度 相談支援・就業支援セミナーの後日、同社は或る地方自治体との事業提携の会見で、その障害者雇用代行ビジネスについて批判がある事に触れられた際に、協会のセミナーに講師として招かれた事について言及し、障害者団体からも理解を得られているという様な事を言っていたと聞く。
勿論、この事自体を批判するつもりは無い。自分が同社広報の立場だったならば、講師として招かれたという事実から、このビジネスは障害福祉関係者からも受け入れられているとアピールするだろう。
協会会員からの抗議・批判の中には、この様な障害者雇用代行ビジネスに協会が“お墨付き”を与える事になるのではないかとの憂慮が記されていた様だが、それが現実のものとなっているのである。

障害者雇用代行ビジネスの是非は、共同通信社の配信記事以降、あちこちで炎上ネタの様相を呈している。
協会主催のセミナーに講師として招いたくらいだし、協会がこれを是とするならば、それはそれでそういう見解だということでいいんじゃないか? 事実、そういう論者も結構多く見受けられる。ただ、そうならば、説明責任はしっかり果たすべきである。
しかしながら、協会事務局内部に居て感じる事は、“臭い物に蓋”で「エスプール」の名前を出す事そのものがタブー…になっているのが、如何にも協会らしいと言えば協会らしい。
無責任・無思想・無節操にも程がある。

『手をつなぐ』2022年11月号

因みに、全国手をつなぐ育成会連合会は、『手をつなぐ』2022年11月号「今月の問題 売り買いされる雇用率 障害者雇用代行ビジネスとその根底にあるもの」で、障害者雇用率制度の歴史から昨今の障害者雇用代行ビジネスの勃興までを概観し、障害者雇用の理念と共生社会の実現の観点から障害者雇用代行ビジネスを批判している。その主張は旗幟鮮明である。

末吉執筆の「浜松町から」の様な、“という意見もありました”とか、“今後の議論に期待します”とかは、何も言っていないに等しい。
これならば、劇的な進化を遂げたOpenAI社の(Chat)GPT-4の方が、低コスト且つ短時間で、いい仕事してくれるんじゃないかな?


当該組合員が障害者雇用代行ビジネスや障害者雇用率制度について思うことは、以前の本組合掲示板BLOG記事、[日々雑感]国及び地方公共団体の障害者雇用率「水増し」問題を許してはならない!〜知的障害者の雇用義務化を巡る経過と共に〜にも書いているが、「雇用率の遵守、つまり数の帳尻合わせだけが障害者雇用の促進の目的なのか?」に尽きる。
障害者雇用代行ビジネスと事業提携を行なっている地方自治体もある様だが、これが障害者雇用促進法の理念に適う事業なのかよく考えてもらいたいものだと思う。

affirmative action programme(積極的差別是正措置)としての障害者雇用率の段階的な引き上げは(ドイツやフランスなど欧州に比べて低いパーセンテージだが)、日本の障害者の一般就労と社会参加促進のメルクマールとなったその歴史的役割は評価するものの、その役目は終えつつあるのではないかと考えている。
須らく、価値ある労働の質の向上と真の社会連帯の両輪が伴った障害者就労施策を図って行く可きである。(続くかもしれない)

Maybe continued…

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