2024年7月3日(水)正午過ぎ、東京はとても暑かった。滴る汗を拭きながら最高裁判所に向かった。
今日は旧優生保護法国家賠償請求訴訟の最高裁判決がある。
最高裁判所が近づくにつれ、マスコミが沢山やって来ているのが遠目からも判る。
最高裁正門に到着したら、ちょうど入廷行動の最中だった。
最高裁正門には多くの障害当事者や支援者、関係者でごった返していたが、これから西門で整理券を配布するとのことで、集まっていた皆と一緒に西門に向かった。
凡そ900人超の人達が西門地下駐車場で長蛇の列を作っている。その中には顔見知りの人達もいた。
裁判所職員が番号が記された整理券を配布し、この後、抽選が行われる。
“いやぁ、これは傍聴するのは難しいだろうなぁ…”と思っていたら、なんと抽選に当たった!
整理券と引き換えに傍聴券(ふりがな付き)を受け取り、最高裁判所の中に入った。
最高裁判所は迷宮の様な造り…と聞いたことがあって、確かに今何階のどの辺に自分が居るのか判らなかった。しかし、いつもそうなのか判らないが、至る所に「いらすとや」のイラストが配された“わかりやすい”案内板が設置してあって(笑)、最高裁は結構親切なんだなと思った。
また、大法廷に入る際に審理されている事件の概要をふりがな付きで配布してくれた。*
* これらは旧優生保護法国賠訴訟の成果としての最高裁判所の“合理的配慮”なのだろうか?ご存知の方はお教えください。
大法廷には私が見たところ、4箇所にモニターが設置されて音声が文字として映し出される仕組みとなっていた。
私は確認出来なかったが、手話通訳者も公費で配置されていた模様である**。
** 「大法廷が公費で手話通訳、全国初 旧優生保護法訴訟の判決で」共同通信 2024.6.17
14:40に原告が入廷、その10分後に被告(国)が入廷。大法廷に緊張感が募る。
これまでの最高裁判決では、国の責任を認めない判決が縷々みられることから、どういう判決が下されるのか、不安でいっぱいであった。
15:00少し前に裁判官等が入廷し、報道陣のフォトセッションが終わり、いよいよ裁判長(戸倉三郎長官)から判決が言い渡される。
「判決を言い渡します。(4件の)上告を棄却する。…仙台高裁の判決は差し戻す。」***
*** 私の記憶に基づいて記しているので、正確な発言ではありません。為念。以下同様。; ;
裁判傍聴慣れしていない私は、“えーっと、上告棄却って?…ん、高裁で負けて上告したのは国だから、国の賠償責任を認めたってことだよな…?”と混乱した。
その後、裁判長から以下の様な判決主旨が述べられた(主要なところのみ抜粋)。
旧優生保護法の不妊手術については……障害があることを「不良」と評価して不妊手術を受けさせる立法は、当時の社会状況を勘案しても正当なものではなく、個人の尊厳と人格の尊重に鑑み、障害者への差別的取り扱いであって、幸福追求権を定めた憲法13条・法の下の平等を定めた憲法14条に反し、違憲である。
また、旧優生保護法では不妊手術は本人の同意によって行われるものとされているが……優生上の見地から障害者個人の犠牲の上に行われる不妊手術に本人の同意を求めること自体が人権尊重の精神に悖るものであり、強制に他ならない。
これまでの裁判で大きな争点となった除斥期間については、改正前民法724条****の除斥期間による請求権の失効を是とした平成元年の判例に触れ……強制不妊手術を受けさせられた障害当事者が訴えを起こすことの困難さを考慮すると、著しく正義・公平に反するものであり、信義則にも反し、権利の濫用と言えるもので、判例は変更されるべきである。
**** (不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
† 本件意見要旨(多数意見・個人意見)はこちらを参照のこと。†
ここでやっと、最高裁は旧優生保護法による強制不妊手術は違憲であり、国の責任を司法判断で示した…つまり、訴えを起こした優生手術の被害者が勝訴したことを確信し、鈍感な私にじわじわと感動が込み上げて来たのだった。
閉廷し、裁判所を出、その後に衆議院第一議員会館で行われた記者会見と報告集会にも参加した。
国際会議室・多目的ホール・大会議室の3会場に分かれ、約500人が参加した。
原告の方々の喜びの声に心が震えた。
1948年の優生保護法の成立から70数年の時が経った。
1996年、母体保護法に改正されるまでの48年間に、統計上では約25,000人の人達が不妊手術を強いられた。
今日の最高裁判決を待たずして亡くなられた原告の方も6名いる。
2019年に成立した「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」でも、国は優生政策、障害者排除・差別政策の責任を認めず、責任の主体を「我々」等と曖昧にし続けている。
この度の正義の司法判断に基づき、国は一刻も早く全被害者に謝罪、賠償し、この悪しき政策の反省に立って、国家権力による人権侵害に繋がる法律や制度が二度と出来ない様な施策を打ち出さなければならない。
そして、この運動の成果を糧として、私達は差別や排除、国家権力による横暴を許さない、真にインクルーシブな社会を目指す運動を担い続けていかなければならない。
旧優生保護法と無関係とは言えない日本知的障害者福祉協会は、この判決をどう受け止め、声明を発するのだろうか?(続くかもしれない)■
…The end
