月刊誌『さぽーと』を本組合掲示板BLOGで取り上げるのは久しぶりである(当該組合員の事情もあって、BLOGの記事UP自体久しぶりだが…)。

* 当該組合員の最高裁大法廷の傍聴記は、[集会報告]旧優生保護法国家賠償請求訴訟 最高裁で完全勝利判決!を参照のこと。
此れ迄の旧優生保護法国賠訴訟で大きな争点となっていたのは、損害賠償請求権が発生から20年を経過すると消滅する除斥期間(改正前民法724条)の壁であった。
此れは1989年12月21日の最高裁の判例に拠るもので、少なくとも事実上は判例に司法判断は拘束されるのが通例だからである。
しかし、旧優生保護法の立法自体の違憲性や被害を訴え出る事の困難さからみて、除斥期間の判例を適用する事が著しく正義に反するとした2022年2月22日の大阪高裁判決がそれを覆し、此の判決に続く他の第二審の多くが同様の判決を下した。
旧優生保護法の違憲性は言わずもがなではあるが、最高裁がこの除斥期間の判例を覆したことは画期的である。
コラム子は、長年の痛苦により最初に声を挙げた被害者女性の訴えと、その支援者、弁護団がいなければ、国家による重大な人権侵害が人民に明らかになることはなかったと述べている。
そして、法律家としての自身の立場から、法律家や医師等専門職が強制不妊手術に関わった歴史的事実を反省し、差別解消の一層の努力をしなければならないと結んでいる。
本BLOG記事がUPされる頃には、全国の『さぽーと』読者の手に届いているかもしれない。是非御一読頂きたい。
被害者補償法案の可決・成立と今後の課題
最高裁判決を受け、2024年9月30日、国と原告団・弁護団・優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)の4者で、国の責任と謝罪、被害者への補償、優生思想に基づく障害者差別の根絶に向けた恒久対策等を定めた基本合意書に調印した。
『さぽーと』2024年10月号の各執筆者の執筆時には未だ成立していなかったが、超党派の議員連盟による補償法骨子素案を基に、2024年10月8日、参議院本会議で旧優生保護法による強制不妊手術の被害者への補償法案が全会一致で可決・成立した。
取り敢えず、被害者補償法**が成立した事は喜ばしい事ではあるが、声を挙げる事が出来無い被害者への相談窓口の周知やこども家庭庁が行なうことになっている被害認定等の課題も残る。
又、此の様な優生思想を基とする立法が再び行なわれない様に、そして障害者に対する偏見・差別の根絶に向けた運動と法整備も引き続き我々も担って行かなければならない。
** 衆議院「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案要綱」
例えば、我々東京南部労働者組合とも関わりのある全国公的介護保障要求者組合では、次なる運動を視野に活動している。
各団体からの声明と我関せずの日本知的障害者福祉協会
コラム「専門委員の視点から 旧優生保護法違憲判決」でも取り上げられている様に、旧優生保護法国賠訴訟最高裁判決の前、2024年2月1日に日本精神神経学会から「優生保護法について」として声明と詳細な報告書が公開されている。
日本精神神経学会「優生保護法について」2024.2.1
障害者の強制不妊手術に関わった専門職団体としての責任と謝罪を表明しており、本件国賠訴訟勝利判決への後押しとなった事だろう。
法曹界の各団体からも声明が発せられているが、此処では日本弁護士連合会の会長声明を以下に取り上げる。
日本弁護士連合会「旧優生保護法国賠訴訟の最高裁判所大法廷判決を受けて、被害の全面的回復及び一時金支給法の改正を求める会長声明」2024.7.3
同上「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律の成立に対する会長声明」2024.10.9
最高裁判決を受けての当事者団体、障害福祉・社会福祉団体からの声明を拾ってみたが、以下の通りである。
全国「精神病」者集団「声明:旧優生保護法違憲訴訟最高裁判決について」2024.7.3
日本障害者協議会(JD)「声明 優生保護法裁判 最高裁「勝訴」判決にあたって」2024.7.3
DPI(障害者インターナショナル)日本会議「優生保護法国家賠償請求訴訟最高裁判決に対するDPI日本会議声明」2024.7.4
全国手をつなぐ育成会連合会「旧優生保護法違憲訴訟の最高裁判所判決を受けた声明」2024.7.5
全日本ろうあ連盟「優生保護法問題に関する最高裁判所判決について【声明】」2024.7.5
全国自立生活センター協議会「旧優生保護法国家賠償の最高裁判決に関する声明」2024.7.12
全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)「旧優生保護法国家賠償の最高裁判決に関するみんなねっとの立場と見解」2024.8.9
そして、
日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)「旧優生保護法国賠訴訟の最高裁判決に対する声明」2024.7.10
旧優生保護法による強制不妊手術とは直接の関係は無いであろう日本ソーシャルワーカー連盟の構成団体は、人権と社会正義の追求を行動原理とする専門職として、無自覚にも加担してきた過去を猛省し、被害者への謝罪と救済、人権回復、補償と優生思想の払拭を声明において言及している。
さて、公益財団法人日本知的障害者福祉協会は何をやっているのか?ということだが、この間も、現時点においても、何の声明も見解も表明していない。
2024年に創立90年を迎える日本知的障害者福祉協会は、戦前の国民優生法、戦後の優生保護法、知的障害者の不妊処置とは無縁なのか?知的障害児(者)施設は一切関わりが無かったとでも言いたいのであろうか?当時施設入所していた障害者が強制不妊手術を受けさせられていた事は明らかだ。
少なくとも日本ソーシャルワーカー連盟よりも、浅からぬ関係があるだろう。
にも拘らず、“我関せず”とでも言いたいのか“無関心”な態度は、知的障害者の福祉を増進し、権利擁護を進める団体として、障害のある人々と地域社会との架け橋に成るべき団体なのに、なぜ関心を示さないのかと、市井の多くの人々から訝しく思われる事くらい脳裏を過ぎりそうなものなのだが?
創立から90年、「日本精神薄弱児愛護協会」の創設に関わった先達は、倫理的・思想的頽廃と言われても仕方が無い様な今日の協会の状態をどう思うのだろうか。■
…The end