[集会報告]10・27 やったね!幹福祉会労組 完全勝利おめでとう集会 〜”Nothing About Us Without Us”をすべての人に〜

2024年10月27日(金)13:30から、東京都立川市にある立川柴中会公会堂で、社会福祉法人幹福祉会で働く訪問ヘルパーが立ち上がり、三多摩合同労働組合・幹福祉分会(以下、三合労・幹福祉会分会と略)として闘った労働基準法違反による未払い残業請求、変形労働時間制の無効を求めての法廷闘争において最高裁まで闘い、完全勝利判決を勝ち取った報告集会が行われた。

会場には連帯共闘関係にある多くの労働組合を中心に支援者ら46人が結集し、小さな集会場はいっぱいであった。

三合労・幹福祉会分会の職場闘争の経緯

原告K氏の登場は勝利のくす玉割りで

三合労・幹福祉会分会の仲間の職場である社会福祉法人幹福祉会(以下、単に法人と略)は、障害当事者が「自立生活運動」として介助労働者を派遣する事業運営の為に立ち上げた社会福祉法人である。
しかし、そこで働く介助者の給与規定は使用者側に都合よく解釈・運用され、介助者は体よく搾取されている状態にあった。
これに疑問を抱いた労働者は法人に異議を申し伝え、労働基準法の遵守と労働環境の改善を訴えたが法人は労働者の声に耳を貸さず、不誠実な対応が続いた為、労働組合を結成し、裁判闘争へと…というのが事の発端である。
業務手当と処遇改善手当を割増賃金の基礎となる基本給に含めてないこと、変形労働時間制が適切に運用されずに残業代の未払いが生じていることを争点した裁判で、地裁・高裁で勝訴し、被告人の法人は最高裁に上告したが2024年4月に上告棄却となり、三合労・幹福祉会分会の勝利が確定した。
経過と現状について、詳しくは下記の本集会で配布された資料を御覧頂きたい。
集会に向けて新たな組合員がかなり苦労されてまとめられたようだが、その努力の甲斐があって経過と今後の課題が理解しやすい。

さて、本集会も労働組合恒例の連帯挨拶があり、ユニオンNo.6や連帯労働者組合全国一般労働組合東京南部フリーター全般労働組合・キャバクラユニオンに加えて、当該組合員(筆者)の東京南部労働者組合・日本知的障害者福祉協会も連帯挨拶のお誘い頂き、本集会に参加した。
三合労・幹福祉会分会の原告であるK氏はいつも協会事務所前の情宣行動・集会に参加頂き、また、我が組合と日本知的障害者福祉協会との団交にも参加頂き、数々の闘争支援を頂いている。

東京南部労働者組合・日本知的障害者福祉協会からの連帯挨拶

当該組合員はただの団体の事務員であることから、在宅介護の現場に携わる労働者・労働組合の皆さんに適する挨拶が出来るか自信は無かったが、拙い発言ではあったが以下に紹介したい(もし、もし発言内容に不正確な部分や間違いがあればお知らせください)。


東京南部労働者組合・日本知的障害者福祉協会です。「やったね!幹福祉会労組 完全勝利おめでとう集会」にあたり、連帯の挨拶を申し上げます。

裁判闘争については私が敢えてどうこうと言うこともなく、当然の正義の司法判断であって、その過程において、時間外労働の賃金不払いの温床となる変形労働制の問題点を炙り出し、全国の介護労働者へ、守られるべき労働者の対価や権利について知らしめた幹福祉会分会の功績は非常に大きなものがあります。しかし、私が「おめでとう」の言葉に加えて、賛辞を贈りたいのは、職場の問題に最初に声を挙げ、拳を振り上げ、闘いの一歩を踏み出したことです。

みんなが何かおかしいと感じていても誰も声を挙げない、挙げられない中、最初に「異議あり!」の一声を発することは、並大抵の勇気ではなかったかと思います。Kさんたち幹福祉会分会の仲間はその一歩を踏み出し、声を挙げ、並々ならぬ忍耐と行動によって今日の裁判闘争勝利を勝ち取った。私はこの最初の一歩を心から讃えたいのです。私の職場でも、不当解任、退職勧奨によって職場を追われた職員たちがおり、私も「異議あり!」の第一声を挙げるには大変勇気が要りました。今後、経営幹部らの好き勝手には絶対にさせない!という思いで職場闘争を継続しているところです。

そこで、この「絶対に好き勝手にさせない!」は、ここにある“Nothing about us without us”そのものです。この言葉は1990年代から障害者の権利運動のスローガンとしてよく使われ始めた言葉です*

この言葉は元々はラテン語で、“Nihil de nobis, sine nobis”。これは近世近代ヨーロッパの対等な国家間条約や君主制から国民主権の確立の際に言われた言葉が語源のようです**。障害者運動のスローガンとなる前にも、例えば、ポーランドの映画監督クシシュトフ・キェシロフスキ(Krzysztof Kieślowski, 1941-1996)が1970年に起こったポーランドでの大規模ストライキとその後の労働者評議会の代議員選挙の不正行為に労働者が抗議するドキュメンタリー“Workers 1971: Nothing about us without us”という映画***を製作しています。

なので、呼びかけビラにある「ヘルパーのことも、ヘルパー抜きに決めてほしくはありません」はまさにその通りで、障害者運動だけのための言葉ではないし、権利を侵害され、抑圧されている人々のためのスローガンとしてもっと広く使われてよい言葉だと思っています。

長くなりましたが、裁判で勝利したとしても、経営者らが居直って組合の要求に真摯に向き合わない姿勢とは、職場で仲間を増やしていき、闘っていかなければならないと思いますので、お互いそんなに若くはないはずですから(笑)、心身の健康にも留意して、がんばっていきましょう!粗末な発言で申し訳ありませんが、連帯の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

* アメリカの障害者運動活動家のJames Charltonによれば、1993年に、南アフリカの障害者運動のリーダーであるMichael MasuthaとWilliam Rowlandが、国際障害者権利会議で東ヨーロッパの活動家がスローガンとしていたのを聞いたとのこと。──Charlton, I. J. “Nothing about us without us: disability oppression and empowerment” p.3 University California Press 1998

** (均衡政策とポーランドの二国間交渉)Kornat, M; Micgiel, J. “The Policy of Equilibrium and Polish Bilateralism” p.76 Columbia University School of International and Public Affairs 2007 /(ハンガリー 1848-1860)Szemere, B. “Hungary, from 1848 to 1860” p.173 Richard Bentley 1860

*** ポーランド語の原題は“Robotnicy 1971: Nic o nas bez nas”、現在(2024.11.30)このドキュメンタリーはYouTubeにアップロードされている。日本語字幕はないが、YouTubeの字幕機能で英語の字幕は表示できる。キェシロフスキ監督はその後、映画「殺人に関する短いフィルム」「二人のベロニカ」など名作を残している(私も学生時代に映画館で鑑賞、良い映画であった)。


当該組合員のぱっとしない挨拶は兎も角…本集会では原告の弁護士であり、ご自身も障害のあるお子さんを持つ谷田和一郎弁護士からの裁判闘争の詳細な法的な解説があり、大変解り易く勉強になった。

また、集会に参加した自立生活運動に関わってきた方の現在の法人の間違った経営に至る内情や、長年労働組合運動に携わってきた参加者からの、三合労・幹福祉会分会の今後の闘いへのアドバイスも、当該組合員の協会の職場闘争にとても参考になるものであった。

職場闘争を通じて新たな闘う仲間が組合に加入

本集会後半には、新たに加入した複数人の組合員の紹介があり、確実に組織化と支援の輪を拡げていることに会場も感動をひとしおであった(正直言って羨ましかった…)。
これも三合労と幹福祉会分会のK氏の労働者の権利を職場に確立する熱意の為せることころに依るものであろう。

旧来の労働組合の集会の締めと言えば、長々としたシュプレヒコール、しかもrhymeも考えないからノリも悪いんだが(それもレトロな味があっていいと言えばいいんだけど…)、本集会の締めには、オリジナルソング「幹福祉会分会 愛のテーマ」というラップ調の歌が組合員によって披露された。
協会の職場闘争・団交にも参加頂いている三合労・ゆにおん同愛会のH氏の巧みなギター伴奏も相俟って、これまでの労働組合の集会にはない明るく希望に満ちたノリのよいシュプレヒコール(?)…いや演奏であった。

以下にその歌詞をご紹介したい。


直行直帰で つながり合えない 非正規ヘルパー 孤独な仕事
自分の権利も ぜんぜん知らない 給与明細も 観ていない

搾取天国 非正規地獄 こんな日本に誰がした?
波風立てずに おとなしく 働いていたら この有り様

これってなんだか おかしくない? 日々の違和感 大切に

Nothing about us without us 我々抜きに 決めないで
Nothing about us without us ヘルパーだって 同じです
We are the Robots じゃありません

話し合い 分かり合い ふれあい 労働組合
自分への愛 他者への愛 社会への愛 労働組合

ともに生きてる どちらも大事 拳じゃヘルパー できません
手と手を取り合い 進みたい 一期一会の 人生だ

─ あなたがいる この世界が 私は好き ─

あっちが増えれば こっちが減る? 権利は そんなもんじゃない
むしろ広がる 豊かな世界 きっと誰もが ハッピーだ

ともに生きよう ともに叫ぼう みんなの権利 まだまだ足りない
国に言いたい 「もっとよこせ!」 権利を奪う権利は無い

─ 安心して働ける環境を 求めることは 贅沢ですか? ─

話したい 分かり合いたい どんな未来を見てみたい?

自分への愛 他者への愛 社会への愛 労働組合 労働組合


「新しい葡萄酒は新しい皮袋に」という聖書の言葉がある(マタイによる福音書第9章第17節)。

連帯挨拶では一部批判的な発言もあったが、これからの時代を担う新たな労働者の闘い(新しい葡萄酒)を旧態依然とした労働組合の在り方(古い皮袋)に無理矢理入れてしまおうとすることはいずれ無理が生じるだろう。

この度の三合労・幹福祉会分会の勝利報告集会の盛況と新鮮さに、新たな労働者の団結の在り方を作り上げていく可能性を感じた。
勇気と希望を与えてくれる心の底から楽しめた集会であった。

…The end

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