前回第12回団体交渉議題からの持ち越し議題である労働者代表選出を巡っての交渉である。
第12回団交でも少しばかり協議したが、前回もこれまでと同様に議論は平行線で、O常任理事が当該組合員が2020年9月9日付で末吉事務局長宛に提出した「公平・公正で民主的な労働者代表選出のための投票方式の提案書」(以下、「提案書」と略)の内容を検討して回答するとこのことになり、(あまり期待はしていなかったが)その回答が協会から2021年2月17日に届いた。が、以前と比べて、少々前進はあったものの予想通りで、以下の様な回答であった。

「本会の職員選出にあたっては、選出の方法について各職員に自由に発言する権利が確保されており、職員の過半数をもって選出方法の決定及び代表者の選出を行っており、本会として代表選出のあり方について関与しておりません。前回からは、管理職が立ち会うべきか否かも含めて、職員の自主性に委ねています。xx組合員(当該註:当該組合員のこと)からご提案のあった選出方法については、改めて確認させていただきました。ついては、xx組合員から提案のあった選出方法を、本会より、職員から提案のあった案のひとつとして、職員の皆様に対して提案させていただきたいと思います。採用するか否かについては、あくまで職員の皆様に判断していただくものと考えております。」

当該組合員としても完璧なものや現状完全に実現可能なものを提案出来ている訳ではないだろうから、検討するとは、“これこれこういう理由により受け入れられない”、または、“この部分は可能だが、現状この部分は難しいのでは?”の回答ならばまだしも、「提案書」の内容について具体的な評価なり検討が為されていないことには変わりない。最早、今回の団交でも結論は見えていたが、少なくとも時間の許す限り、テッテー的に議論を尽くさなければならない。

公平・公正で民主的な労働者代表を巡る遣り取り

早速、2月17日の回答では「提案書」の内容の評価に触れられていないが、それについてどう考えるか?と尋ねたところ、古屋総務課長はこの様に答えた。

(古屋総務課長) メール頂いた、例のグループウェアで代表を決めるということについては、さすがxxさんらしい考え方だと思っていて、感心はしたところなんですけども、これに関しても、やはり、職員の皆さんに示した上で、ご意見いただいて、皆さんの中で決めて頂くものだと思いますので、もしあれでしたらこちらの方から、職員側からこういった案が出てますっていうことで提案させて頂いて、職員の間で検討頂ければと思いますけど、それについては今回、回答させて頂いてます。

とのことで、「さすがxxさんらしい考え方だと思っていて、感心はしたところなんですけども」等と言っていたが、2020年9月9日に「提案書」を提出した後に協会管理職らが何をやっていたか知っているだけに、よくそんな白々しいことを言えるなと思ったが…まぁ、それはいいが、その後は「職員の判断」の一点張りで、労働者代表選出に際して職員が自由に発言する機会は担保されていると思うと言っていたが、「担保されていると思う」ではなくて、確実に担保される方策を考えなければならないのは、使用者・管理職・総務部門として当然だろう。その為には、小集団内の対人関係によって取り分け強く働く同調圧力を徹底的に排した、秘密選挙による民主的で公平・公正な選挙が望ましいことは言うまでもない。そして、それはどこの職場でもそうだが、使用者側がその様な環境整備を行なわなければならないのであり、常識なのである。*

* [職場闘争]第10回団交報告 epilogue 〜「選挙」ってなんだ〜

協会の話を聞いていると、法律に「挙手」と書いてあるから、挙手でも問題がないということらしいが、これは以前の記事でも述べた様に、当時の協会顧問弁護士の助言によって、“とりあえず”“たまたま”そうしたってだけの話だ。
また、労働基準法施行規則第6条の2 2 には、以下の様に規定されている。

「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。」

労働基準法施行規則第6条の2 2

この様に「挙手」はあくまで例示で、より望ましい形で選出されることが法の趣旨である。

しかも、団交の席上、三浦政策企画課長(兼事業課長)は「挙手には拘ってないですよ、勘違いなさってると思いますけど」と言ったかと思えば、法令を引き合いに出して、「でも、だったらなんで挙手がそれに載ってるんですか。より民主的な方法がはっきりしてるんだったらば、それ一つだけにすればいいじゃないですか」「決まり切ってるんだったら、それ一つだけ示せばいいだけなんで」等という、前言を翻して、結局は挙手に拘っているという支離滅裂さだ。

H特別執行委員の職場(社会福祉法人同愛会・日の出福祉園)のモデル的な労働者代表選出の取り組み

本団交にあたって、H特別執行委員(「ゆにおん同愛会」執行委員長)の職場である、協会会員施設でもある東京都・日の出福祉園の労働者代表選出手続きを拝見させてもらった。ここまでしっかりとした選挙管理委員会や選出規程を日本知的障害者福祉協会事務局に要求するのは困難だとは思うが、職員組合が使用者側との団体交渉での粘り強い交渉の結果として勝ち取ってきた労使での合意は大変参考になるので、本団交ではH特別委員にはその闘いの経過と共に、民主的な選挙制度について、初歩的なところから発言してもらったが、協会の幹部連中は自説・持論に固執し、虚心坦懐に理解しようという気が全くみられなかったため、H執行委員長は次の様に協会にその認識を問い質した。

(南部労組H特別執行委員) 今の時点での認識を新たに確認したいんです。挙手選出と、秘密投票と、どちらがより民主的ですか。今の時点での認識をお聞かせください。日本知的障害者福祉協会の民主主義に対する考えが問われてますよ。
(O常任理事) それは、どちらがより良いということでは、どちらも必要な手続きだと思いますので、それも含めて職員にしっかりと。
(南部労組H特別執行委員) 今はどう思ってるんですか。どちらですか。
(O常任理事) 私はどちらでも大丈夫だと思ってます。
(南部労組H特別執行委員) 厚労省の基準にあるから大丈夫って、そういう話じゃなくて。
(O常任理事) 天秤に掛けて、どちらということはないと思います。それを選択するのは職員であると思いますので。
(南部労組H特別執行委員) だから、その結果の話は別段階でしょう。次の段階でしょう。選択は次の段階じゃないですか。それをいつも持ち出すけどね、そうじゃなくて、挙手の選出と秘密投票と一体どちらがより民主的ですか?って聞いてるんです。
(O常任理事) だから、より民主的という比較はできないでしょうということをお答えしてるんです。
(南部労組H特別執行委員) なぜですか。
(O常任理事) 私はできない。
(南部労組H特別執行委員) なぜですか。根拠は?
(O常任理事) 私はそう考えていると。
(南部労組H特別執行委員) 二つ違うやり方があって、より民主的な選出の方法がどっちだっていう評価をしていかないと、次の先に進まないじゃないですか。評価があるはずなんです。
(O常任理事) それを使用者側が押し付けるっていうことになってもいけないわけでしょう。
(南部労組H特別執行委員) 違います。より民主的な方法を整えないといけないです。事業所側が。
(O常任理事) だから、より民主的っていうのは、確定的には、私からは言えないっていうことを言っているんじゃないですか。
(当該) いや、違う。だから、協会が民主的とはどういうことかと考えるのか、ということを聞いている。

H特別執行委員が言っていたのは、職員全員一致や多数決での使用者側への要求ではなく、使用者側も民主主義の原則に基づいた共通認識を持っていたことから、現在の様な労働者代表選出方法のあるべき姿になったと言っているのであって、協会の様に「わからない」「選択するのは職員」の一点張りでは議論にならないので、日本知的障害者福祉協会が自由で公平・公正な選挙という民主主義の最低条件を尊重する姿勢を問うているのだ。自ずと答えは出る筈だ。

因みに、古くは1789年のフランス革命前夜の全国三部会会議での地方代議員選出では現代の選挙制度に近い、秘密選挙を行なっている**。民主主義における選挙制度の歴史的経緯を知っているならば、「わからない」等とは言えないだろう。
本当に「わからない」ならば、協会幹部の社会性や教養の有り様が問われるのだが、こんなことを言うと、本団交でも協会が漏らしていた「xx(当該組合員)が思っているほど職員のレベルは低く無い」などと言うことになるのだろうが(そんなことは当該組合員は言っていない)、実際がこうなのだから、少なくとも協会幹部・管理職の無教養の誹りは免れない。
無教養とは失礼な!というのであれば、これまでの団交と同様に自説に拘泥し、誠実な交渉をする気など無い(不誠実団交)と思うしかない。

最後に、南部労組K執行委員長から、協会側団交メンバーにも解る様な平たい言葉で、率直な意見が出された。

(南部労組K執行委員長) 選挙と挙手がどっちが民主的かって、挙手っていうのは全員が集まってやるわけでしょう? そういうもんですよね。10人とか15人でも。だから、必ず意識するんですよ。例えば、仲のいい人間がいるわけ。これはものすごくプレッシャーかかるんですよ。あの人、どっち挙げるんだろうかなとか、これ、考えてほしいわけ。これはあんまりいい思いじゃないと思うわけ。こういうとこは、公平に、みんなが落ち着いて考えてやれるっていうことであれば、本音を出せるっていうのは、これは明らかに挙手じゃないですよ。こういう心理というものを考えてもらってもいいと思う。これはすごく大事なことなんですよ。

至極、当然の指摘である。誰だってそう考えるだろ。
そもそも、国政選挙や地方選挙等の公職選挙では「挙手」で議員なり首長なりを選んでいるのかね?

彼らは何故、挙手に拘るのか?

事務局職員は時期にもよるが極めて多忙であり、担う業務も多様である。その様な就業時間中に全職員が一堂に会してとなったら、熟慮する時間的猶予も無く、しかも、全職員の中で「挙手で」となったら、そして、そこには職位を持った業務上も心理的にも各職員に強い影響力のある管理職が立ち会っているならば、各自が自由な意思表示を行うことが如何に困難か、個々人にどの様な心理作用が働くかは容易に想像できるだろう。

再掲はしないが、これまでの協会の労働者代表選出のやり方を見てみるがいい。

[職場闘争]給与規程変更に労使協議・手続きは不要なのか?! part 2
[職場闘争]協会「育児・介護休業等規則」改定案が示される part 2 〜肉屋を支持する豚になりたいか?〜
[職場闘争]職員会議で三六協定案が示されるが… 〜「働き方改革」関連法による新労基法への対応如何?〜
[職場闘争]「働き方改革」関連法施行後の三六協定他労使協定を締結 part 3〜「権利の上にねむる者…」でいいのか?〜
[職場闘争]第9回団交の労使合意を無視した労働者代表選出〜派遣労働者の受け入れ延長に伴う労働者の意見聴取について〜
[職場闘争]第10回団交報告 part 3 〜第9回団交の労使合意不履行への抗議と釈明要求他〜

無知な管理職によって、明らかに法の趣旨「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」に反した行為も行われそうになったし(当該組合員によって阻止)、“民主的”な体裁を取り繕ってはいるものの、実態として、真に公平・公正で労働者の自由意志によって選出が行われているとは言えない。

彼らは何故、挙手に拘るのか?
なんだかんだと方法論について御託を並べているが、要は使用者側・管理職の監視下で労働者代表を選出させたい、組織や“上司”に批判的な職員は排除したいという思惑があるからである。

より適正な方法で労働者代表を選出するならば、これまで事務局長の末吉の無知によって行われていなかった三六協定を初めて協会事務局で締結した際に、当時の協会顧問弁護士の助言によって挙手で代表を選出するとした様に、協会が投票により選出するとすればいいだけの話だ。
実際、H特別執行委員の職場でも、労働者代表選出方法について、職員の多数決で決めた訳ではなく、その方が望ましいことから使用者側によって投票による選出方法が定められたのである。

挙手と秘密選挙による投票と、どっちが自由な意思決定よる公平・公正で、且つ民主的な方法なのか判らない…なんて、本当にそう思っているなら、相当にnaiveじゃないか? そんな人物に協会幹部が務まるのか?
あれ? 日本知的障害者福祉協会って、確か…私の記憶だと、知的障害者の意思決定支援に取り組んでるんじゃなかったっけ?

協会会長の井上さん、どう思います?

残り議題の都労委で和解になった「不利益取り扱い・支配介入」の件、和解協定の協会の遵守・履行状況については時間切れにより次回に持ち越し、約1時間の第13回団体交渉を終えた。
そして、その翌日何が起こったか….をお知りになりたい読者諸賢はpart 1をどうぞ。

第13回団体交渉のテキスト反訳をお読みになりたい方は、お名前・Eメールアドレス・所属・目的を明記の上ご連絡ください。PDFファイルをお送りいたします(場合によってはご希望に添えないこともあります)。

…The end

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